漫罵(北村透谷)のあらすじ・登場人物
明治の浅薄さを痛罵する
- 文字数
- 1,690字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
北村透谷の評論。1893年(明治26)10月、『文学界』に発表。明治の日本が洋風と国風を無節操に混ぜ合わせる風潮と、それに無自覚な文学者を痛烈に批判する。短いが、透谷の怒りと皮肉が鮮やかな一篇。
あらすじ
冒頭は友と銀座から木挽町へ歩いた夕べの情景。橋の上から眺めると、建物は白壁あり赤瓦あり、洋風あり国風あり、行き交う人の服装も和服、洋服、フロック、背広、紋付、前垂れとまちまちで、持ち物もステッキ、洋傘、風呂敷と入り混じっている。この混ぜこぜの美意識を戒め、結びでは、アンコロを最上の珍味とするお前たちは詩論などせず帰って店頭に出ろ、と詩論家たちに毒づく。
冒頭部(原文より)
一夕友と与に歩して銀街を過ぎ、木挽町に入らんとす、第二橋辺に至れば都城の繁熱漸く薄らぎ、家々の燭影水に落ちて、はじめて詩興生ず。われ橋上に立つて友を顧りみ、同に岸上の建家を品す。或は白堊を塗するあり、或は赤瓦を積むもあり、洋風あり、国風あり、或は半洋、或は局部に於て洋、或は全く洋風にして而して局部のみ国風を存するあり。更に路上の人を観るに、或は和服、或は洋服、フロックあり、背広あり、紋付あり、前垂あり。更にその持つものを見るに、ステッキあり、洋傘あり、風呂敷あり、カバンあり。爰に於て、われ憮然として歎ず、今の時代に沈厳高調なる詩歌なきは之を以てにあらずや。
「漫罵」北村透谷(青空文庫)
末尾部(原文より)
汝を囲める現実は、汝を駆りて幽遠に迷はしむ。然れども汝は幽遠の事を語るべからず、汝の幽遠を語るは、寧ろ湯屋の番頭が裸躰を論ずるに如かざればなり。汝の耳には兵隊の跫音を以て最上の音楽として満足すべし、汝の眼には芳年流の美人絵を以て最上の美術と認むべし、汝の口にはアンコロを以て最上の珍味とすべし、吁、汝、詩論をなすものよ、汝、詩歌に労するものよ、帰れ、帰りて汝が店頭に出でよ。 (明治二十六年十月)
「漫罵」北村透谷(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。