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祭のこと(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

祭の夜の熱気と暗さ

泉鏡花 1923年(大正12年)8月

文字数
2,024字
読了目安
約4分
表記
旧字旧仮名
種別
随筆

この作品について

泉鏡花が大正12年(1923)8月に書いた短い随筆。魚屋の赤ん坊が山王祭の猿田彦の面を覚えているという話から、梅雨空の下で暗い印象になる祭の夜、神輿を担ぐ若い衆の気迫、町内の酒所の賑わいまで、江戸っ子の祭の昂揚を、勢いのあるリズムで描く。

あらすじ

(内容の要旨)家人が魚屋で聞いた話から始まる。誕生を過ぎたばかりの赤ん坊に「お祭は」と尋ねると、山王様の猿田彦の面を思い出して鼻をつまみ、「お獅子は」と尋ねると、半纏の袖を引っ張ってかぶる仕草をするという。祭はまことに嬉しいものだ。筆者は思い出す。祭の夜はなぜか暗く、梅雨の頃で月も出ないことが多いが、その暗さこそ絵行燈や紅の提灯、萬燈に似つかわしい。昼は酒を浴びた若い衆が血走った目で神輿を担ぎ、神輿そのものが意志を持つかのように人の波を引き回す。三社様の神輿が吉原の仲の町で、久しく病んでいた茶屋の女房を見舞うように据わり、その病が即座に癒えたという逸話もある。町内には酒所が設けられ、獅子舞や囃子、人形や生け花の飾りで祭の支度が整う。夜が更けるにつれ、灯が一つずつ消え、遠くの町から子どもたちの「わっしょい」の声だけが夢のように響いてくる。

冒頭部(原文より)

 いまも中六番町の魚屋へ行つて歸つた、家内の話だが、其家の女房が負ぶをして居る、誕生を濟ましたばかりの嬰兒に「みいちやん、お祭は、――お祭は。」と聞くと、小指の先ほどな、小さな鼻を撮んぢやあ、莞爾々々、鼻を撮んぢやあ莞爾々々する。  山王樣のお渡りの、猿田彦命の面を覺えたのである。  それから、「お獅子は? みいちやん。」と聞くと、引掛けて居る半纏の兩袖を引張つて、取つてはかぶり、取つてはかぶりしたさうである。いや、お祭は嬉しいものだ。

「祭のこと」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 夜が更けると、紅の星の流るゝやうに、町々の行燈、辻の萬燈、横町の提灯が、一つ消え、二つ消え、次第に暗く更くるまゝに、やゝ近き町、遠き辻に、近きは低く、遠きは高く、森あれば森に渡り、風あれば風に乘つて、小兒まじりの聲々が、 わつしよい/\、わつしよい/\、わつしよ、 わつしよ、わつしよ、――わつしよ。……  聲ある空は、ほんのりと、夢のやうな雲に灯を包んで動く。……かゝる時、眷屬たち三萬三千のお猿さんも遊ぶのらしい。 わつしよ、わつしよ、 わつしよ、わつしよ――/\/\。……

「祭のこと」泉鏡花(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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