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飯待つ間(正岡子規)のあらすじ・登場人物

飯を待つ一刻を写しとる

正岡子規 1899年(明治32年)10月 「ホトトギス」

文字数
1,699字
読了目安
約3分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

正岡子規が1899年(明治32年)、「ホトトギス」に発表した写生文。子規が提唱した写生文の実践作として名高い。病牀にあって朝飯を抜き、遅い昼飯を待ちかねる子規が、蒲団に頬杖をついて、庭の草花や空の雲、子猫をいじめる近所の子どもたちの声などを、ありのままに写しとる。日常のなにげない一刻を、細やかな観察眼で描き出した小品である。

あらすじ

余は昔から朝飯を喰わぬことにきめているので、病人ながらも腹がへって、昼飯を待ちかねるのが毎日のことである。今日ははや午砲(正午の号砲)が鳴ったのに、まだ飯ができぬ。枕もとには本も硯もなく、新聞の一枚も残っていない。仕方がないので、蒲団に頬杖をついたまま、ぼんやりと庭をながめる。おとといの野分のなごりか、空は曇っている。並んだ鶏頭は風の害を受けながらも起き直り、真赤な頭を揃えている。雁来紅の美しい葉が白い干し衣に映り、大毛蓼が丈高くかぶさっている。さっき庭へ来た三人の子どもが、一匹の子猫を追いまわしてつかまえ、垣の外でまだいじめている。「そんなに打つと化けるよ」と気遣う声、「なに化けるものか」と平気な声。小さな黄の蝶がひらひらと飛び、籠の鶉もひもじげに籠を掻き、台所では皿や徳利の触れる音がしている。見るものがなくなって空を見上げると、黒雲と白雲が丑寅の方へずんずん動いてゆき、少し青空も見えてきて嬉しい。やがて――「かッと畳の上に日がさした。飯が来た」。病牀の子規が、遅い昼飯を待つあいだの何気ない一刻を、写生の目で克明に写しとった小品である。

冒頭部(原文より)

 余は昔から朝飯を喰わぬ事にきめて居る故病人ながらも腹がへって昼飯を待ちかねるのは毎日の事である。今日ははや午砲が鳴ったのにまだ飯が出来ぬ。枕もとには本も硯も何も出て居らぬ。新聞の一枚も残って居らぬ。仕方がないから蒲団に頬杖ついたままぼんやりとして庭をながめて居る。  おとといの野分のなごりか空は曇って居る。十本ばかり並んだ頭は風の害を受けたけれど今は起き直って真赤な頭を揃えて居る。一本の雁来紅は美しき葉を出して白い干し衣に映って居る。大毛蓼というものか馬鹿に丈が高くなって薄赤い花は雁来紅の上にかぶさって居る。

「飯待つ間」正岡子規(青空文庫)

末尾部(原文より)

 例の三人の子供は復我垣の外まで帰って来た。今度はごみため箱の中へ猫を入れて苦しめて喜んで居る様子だ。やがて向いの家の妻君、即ち高ちャんという子のおッかさんが出て来て「高ちャん、猫をいじめるものじャありません、いじめると夜化けて出ますよ、早く逃がしておやりなさい」と叱った。すると高ちャんという子は少し泣き声になって「猫をつかまえて来たのはあたいじャない年ちャんだよ」といいわけして居る。年ちャんという子も間が悪うて黙って居るか暫く静かになった。  かッと畳の上に日がさした。飯が来た。

「飯待つ間」正岡子規(青空文庫)

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