木菟俗見(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
苗売りの声と木菟の夜
- 文字数
- 10,411字
- 読了目安
- 約21分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
昭和6年(1931)8月、東京朝日新聞に6回にわたって連載された泉鏡花の随筆。苗売りの声から始まり、夏の夜に鳴く木菟や行々子、外房州の旅宿で聞いた木菟の声と天井裏の鼠、銀座のバーから来た女中、按摩から聞いた土地の話と、軽い洒落と脱線を重ねた俗談風の一編。
あらすじ
(内容の要旨)苗売りの声がなつかしい、という話から始まる。朝顔、夕顔、鶏頭などの苗を売る声は、昔は山の手の邸町に響いたが、近頃は舶来の花の名を連ねるものに変わった。続いて筆者は、夜鷹や梟とは違う木菟の声を話題にする。先月、外房州の宿に泊まったとき、窓の外の松で木菟が毎夜鳴き、その後、天井裏で鼠が不思議な足音を立てたので、化物の話にかこつけて土地の人に尋ねようと、旅宿の女中や按摩に話を聞いてみる。しかし女中は「銀座のバーから来たばかりですからねえ」と答えるばかり、按摩は木菟を食べ物の話にしてしまい、期待した怪談は出てこない。その間にも、堀切や新小岩の葦原で聞いた行々子の声、加賀の河原で見た河蝉、白鷺のことなど、次々に脱線しながら、夏の夜の鳥と風物を愛でる。最後は、木菟の声を聞きながら、苗売りの朝顔ももう咲くころだと思い、翌朝の味噌汁の実のことまで思いめぐらして筆を置く。
冒頭部(原文より)
苗賣の聲は、なつかしい。 ……垣の卯の花、さみだれの、ふる屋の軒におとづれて、朝顏の苗や、夕顏の苗…… またうたに、 ……田舍づくりの、かご花活に、づツぷりぬれし水色の、たつたを活けし樂しさは、心の憂さもどこへやら……
「木菟俗見」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
鳴いて居る……二時半だ。……やがて、里見さんの眞向うの大銀杏へ來るだらう。 みゝづく、みゝづく。苗屋が賣つた朝顏も、もう咲くよ。 夕顏には、豆府かな――茄子の苗や、胡瓜の苗、藤豆、いんげん、さゝげの苗――あしたのおつけの實は……
「木菟俗見」泉鏡花(青空文庫)
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