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遍路(斎藤茂吉)のあらすじ・登場人物

傷心の旅で出会った遍路

斎藤茂吉 1928年(昭和3年)1月 「時事新報」

文字数
2,848字
読了目安
約6分
表記
新字旧仮名
種別
随筆
舞台
  • 和歌山県

この作品について

斎藤茂吉が熊野の那智から大雲取を越えて小口へ至る山道を歩いた旅の記録。前年冬に火災で病院を失った後の傷心の旅で、山中で出会った二人の遍路に励まされる。

あらすじ

那智には勝浦から馬車で行った。登り口で豪雨となり、しばらく休んで雨装束を整え、滝へ向かう。滝は華厳より小さいが、思ったよりよかった。石畳の道を登ると息切れがする。船見峠、大雲取を越えて小口の宿まで行けるかどうか懸念があり、那智権現に参拝して今度の行程を祈願した。滝見屋で弁当を用意し、先達を雇って出発する。山越えは筆者にとって苦しいものだったが、同行のT君の励ましと、偶然出会った二人の遍路の姿に慰められた。昨冬の火難以来、筆者は前途の光明を失っていたからである。

冒頭部(原文より)

 那智には勝浦から馬車に乗つて行つた。昇り口のところに著いたときに豪雨が降つて来たので、そこでしばらく休み、すつかり雨装束に準備して滝の方へ上つて行つた。滝は華厳よりも規模は小さいが、思つたよりも好かつた。石畳の道をのぼつて行くと僕は息切れがした。

「遍路」斎藤茂吉(青空文庫)

末尾部(原文より)

 この山越は僕にとつても不思議な旅で、これは全くT君の励ましによつた。然も偶然二人の遍路に会つて随分と慰安を得た。なぜかといふに僕は昨冬、火難に遭つて以来、全く前途の光明を失つてゐたからである。すなはち当時の僕の感傷主義は、曇つた眼一つでとぼとぼと深山幽谷を歩む一人の遍路を忘却し難かつたのである。然もそれは近代主義的遍路であつたからであらうか、僕自身にもよく分からない。

「遍路」斎藤茂吉(青空文庫)

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原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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