リギ山上の一夜(斎藤茂吉)のあらすじ・登場人物
アルプスの日の出
- 文字数
- 6,579字
- 読了目安
- 約13分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
斎藤茂吉の留学中の旅の随筆。スイスのリギ山に登り、山上の宿に一泊して日の出を見る。壮大な自然と、同行した妻への奇妙な感慨が重なる。
あらすじ
瑞西の首都チューリヒを午後二時十分発の急行列車で立ち、四方から湖に囲まれた姿のリギ山に一夜を過ごそうとする。窓から見る丘陵の家並みは長崎を思わせ、遥かな谷間から濁った川が勢いよく流れる。汽車はツーク湖に沿って南下し、湖畔の小綺麗な村落や隧道を過ぎ、山が近づく。山上で泊まった翌朝、ふたりは障碍を受けずにアルプスの美しい日の出を見た。筆者は、山上の日の出は劫初の気持ちであり開運の徴でもあると感じ、それに比べて、連れ添う我執の強い妻が奇妙な者のように思われたと記す。
冒頭部(原文より)
一 瑞西の首都 Zrich をば午後二時十分発の急行列車で立った。そして、方嚮を東南に取り、いわば四方から湖に囲まれたという姿の、Rigi の山上に一夜泊ろうとしたのであった。 汽車の立つ時、窓から首を出して見ていると、向うの丘陵に家のたて込んでいる工合は丁度長崎を思わせるようなところがあった。汽車は急いで走った。だんだん山地になり、その起伏の工合が如何にも鮮媚であるのが通常ではない。遥かの谷間から出て来る川の水は濁って勢づいて流れていた。
「リギ山上の一夜」斎藤茂吉(青空文庫)
末尾部(原文より)
そこで、つまり僕たちふたりは障礙を微塵も受けずにアルプス山上の美しい日の出を見たのであった。僕は独逸文学のことは好く知らずにしまうが、その中には日出写生のいい文章は幾つかあるであろう。山上の美しい日の出は、いわば劫初の気持であり、開運の徴でもある。それに較べると、現に連れ添うている、我執をもつ僕の妻なんかは、実に奇妙な者のような気がしたのであった。
「リギ山上の一夜」斎藤茂吉(青空文庫)
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