無人島に生きる十六人(須川邦彦)のあらすじ・登場人物
島でくらす日課を、きめよう
- 冒険
- 文字数
- 100,616字
- 読了目安
- 約3時間21分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
明治三十一年、太平洋の無人島に漂着した帆船・龍睡丸の乗組員十六人が、絶望の島で規律と工夫と明るさを守り抜いて生還するまでの実話。中川倉吉船長の体験談を、教え子の須川邦彦が少年向けの読み物として書き残した。日課を定め、島を測り、海亀と語らい、望楼を建てて船を待つ——読み終えたあと必ず胸が熱くなる、日本のサバイバル記の名作である。
あらすじ
練習帆船の実習学生だった「ぼく」は、教官・中川倉吉から生涯忘れられない体験談を聞かされる——龍睡丸の遭難である。真珠貝を探して南洋を航行していた帆船は、ある夜、海図にない珊瑚礁に乗り上げて沈没した。命からがら上陸したのは、水も木もない、周囲わずかの砂の無人島だった。船長は落胆する乗組員を集めてこう告げる。この島でくらす日課をきめよう、島の生活を愉快にしよう、そしてけっして病人を出すな、と。四つの誓いが立てられ、規律ある共同生活が始まった。海水から蒸留して真水をつくり、海鳥と魚と海亀で食をつなぎ、アザラシの脂で灯をともす。島の測量、亀の飼育場づくり、望楼の建設と当番制の見張り、そして毎晩の勉強会——十六人は誰ひとり心を荒ませずに日々を積み重ねてゆく。海亀に名をつけてかわいがり、鳥を手なずけ、島に生きるものすべてを仲間として遇した。何度も通り過ぎる船影に絶望しかけながら、望楼の火を絶やさず待ちつづけること十二か月あまり。ついに的矢丸に発見され、十六人は一人も欠けることなく生きて母国の土を踏む。手紙も書けなかった水夫が立派な手紙を出し、四人の青年は運転士免状をとった——長い物語を終えた中川船長を見上げると、帆桁の間から銀河があおがれ、「ぼく」の頬には涙が流れていた。
登場人物
- 中川倉吉 龍睡丸の船長。物語の語り手
- 小笠原 一等運転士
- 十六人の乗組員 士官・水夫・漁夫たち
- ぼく(須川邦彦) 船長の話を聞く実習学生
冒頭部(原文より)
中川船長の話 これは、今から四十六年前、私が、東京高等商船学校の実習学生として、練習帆船琴ノ緒丸に乗り組んでいたとき、私たちの教官であった、中川倉吉先生からきいた、先生の体験談で、私が、腹のそこからかんげきした、一生わすれられない話である。
「無人島に生きる十六人」須川邦彦(青空文庫)
末尾部(原文より)
中川船長の、長い物語はおわった。ぼく(須川)は、夢からさめたように、あたりを見まわした。物語のなかに、すっかりとけこんでいたので、よいやみせまる女良の鎮守の森の、大枝さしかわすすぎの大木の根もとに、あぐらをくんでいるのだと思っていたが、この大木は、練習船琴ノ緒丸帆柱で、頭上にさしかわす大枝は、大きな帆桁であった。 見あげる帆桁の間からは、銀河があおがれた。夜もふけて、何もかも夜露にぬれ、帽子からぽたりと落ちた露といっしょに、なみだがぼくの頬を流れていた。
「無人島に生きる十六人」須川邦彦(青空文庫)
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