宇宙の迷子(海野十三)のあらすじ・登場人物
ポコちゃんと千ちゃん、遊星へ
- SF
- 冒険
- 文字数
- 42,574字
- 読了目安
- 約1時間25分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1947年(昭和22年)、雑誌「少年クラブ」に半年ほど連載された海野十三の少年向けSF。夏休みに宇宙艇「カモシカ号」で月へ出かけた二人の少年、ポコちゃんと千ちゃんが、宇宙の墓場でさまよう不思議な遊星ジャンガラ星にたどり着く。そこは空気があり、奇妙な植物が茂り、三本の腕を持つ住人の暮らす世界だった。ユーモラスな少年たちの掛け合いと、異星人との行き違い、そして仲直りまでを描いた、明るい調子の宇宙冒険譚である。
あらすじ
千九百七十何年かの夏、のんきなポコちゃん(川上一郎)と級長の千ちゃん(山ノ井万造)は、二カ月の夏休みを使って月世界を探検しようと、宇宙艇カモシカ号で東京を出発する。隕石の群れを切り抜けた二人は、重力のつり合う「宇宙の墓場」に入り、艇長服を着たがいこつの警告に出会う。ところが突然の大事件で艇は不時着し、二人は離ればなれになる。目覚めたポコちゃんは、三本の腕を持つ怪物に迎えられ、そこが空気のある不思議な遊星ジャンガラ星だと知る。カロチ教授から星の成り立ちを聞いたポコちゃんは、千ちゃんが星の人々に凶悪犯と見なされていることを知り、仲間を捜して樹海へ飛ぶ。誤解がとけて仲なおりをした二人は、自力で宇宙を旅するジャンガラ星と別れて地球へ向かうが、星は地球に近づきすぎ、大きな災厄を招いてしまう。
登場人物
- ポコちゃん(川上一郎) 顔のまるい、のんきでにぎやかな少年
- 千ちゃん(山ノ井万造) 勉強家で級長を務める少年。機械や天文にくわしい
- カロチ教授 ジャンガラ星の学者。少年たちに星のことを教える
- ジャンガラ星人 三本の腕を持ち、植物を大切にする住人
冒頭部(原文より)
ゆかいな時代 このゆかいな探険は、千九百七十何年だかにはじめられた。いいですか。 探険家はだれかというと、川上一郎君、すなわちポコちゃんと、山ノ井万造君、すなわち千ちゃんと、この二人の少年だった。 川上君は、顔がまるく、ほっぺたがゴムまりのようにふくらみ、目がとてもちいさくて、鼻がとびだしているので、まめタヌキのように、とてもあいきょうのある顔の少年だ。タヌキはポンポコポンであるから、それをりゃくして川上君のことを友だちはポコちゃんとよんでいる。とてものんきな、にぎやかな子どもだ。
「宇宙の迷子」海野十三(青空文庫)
末尾部(原文より)
ジャンガラ星は、こうして姿を変えた。地球もめいわくな空中塵になやまされなければならなかった。ある学者は、この空中塵が地球上に氷河時代を出現せしめるであろうし、そのために人類はみな死滅するであろうと予告したが、じっさいはそれほどのことはなかった。しかし全世界は地上に達する太陽熱が減ったために、それから十年間というものは凶作がつづいた。おそろしい影響であった。 カロチ教授たちは、みんな死滅してしまって跡形もない。川上、山ノ井の二少年だけはさいわいにも一命を拾った。それは二少年は、ジャンガラ星が地球に接触する三時間前に、落下傘を作りあげて、ジャンガラ星から脱出し、運よくオーストラリアに着陸することができたためであった。 二少年は、その後元気になってから、めずらしいジャンガラ星の話をして、みんなに喜ばれた。二少年は、そのうちに新しい宇宙艇を手に入れて、またもや宇宙探険に出かけるといっている。そしてまだわれわれの知らない宇宙にすんでいる高等生物に面会し、こんどこそぶじにこの地球へ案内するんだと、たいへん意気ごんでいる。
「宇宙の迷子」海野十三(青空文庫)
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