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月世界跋渉記(江見水蔭)のあらすじ・登場人物

空気のない月を歩く

  • SF
  • 冒険

江見水蔭 1907年(明治40年)10月 「探検世界」

文字数
9,152字
読了目安
約18分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

明治四十年、桂田工学博士と月野理学博士、二人の助手、二人の中学生という六人が、最新式の空中飛行船で月世界を探検する。月の引力で墜落した一行は、空気のない月面で、背に空気自発器を負って歩き、声が伝わらないので筆談で語り合う。体の軽さに驚き、断崖を羽根のように降り、行方不明の博士を捜すなど、少年向けの探検冒険の読み物として軽快に描かれる。雑誌「探検世界」の増刊号に載った、明治の空想科学小説。

あらすじ

月世界探検隊の空中飛行船翔鷲号は、日本を出て十六日目、月の引力に曳かれて月面に墜落し、六人は気絶する。一行は工学博士の桂田啓次、理学博士の月野清、助手の山本広と卯山飛達、中学四年生の星岡光雄と空知晴次(二人は月野博士の親戚の少年)である。先に正気づいた桂田博士の薬で皆が息を吹き返すと、月には空気が全くないことがわかり、背に新式空気自発器を負い、仮面で鼻と口を覆って外へ出る。空気がないため音は伝わず、筆談で話す。体は軽く、石も掌に乗るほど軽い。石の下に昔の空気が残る洞穴を見つけ、入口を塞いで呼吸の拠点とするが、留守を頼んだ桂田博士の姿がなくなる。一同は月のアルプス山脈の頂で、博士が刻んだ明治四十年十月の探検隊の記念碑を見つけ、無事を知る。光雄が崖から落ちると、空気のない月では羽根のようにゆっくり降りるだけで、一同も飛び降りて、ツランクイリチー大海の跡で博士と再会する。その後、食料が一月足らずのため、月野博士が探検、桂田博士が飛行船の修繕を受け持つ。十八日目に修繕は終わり、探検隊は山のような荷を背に戻る。月野博士は、昔月に人類がいたことを示す人形の土器など古代の遺物を広げて喜ぶ。出発を翌日に決めた一行は、空気孔の洞で蝋燭を灯し、ブランデーを掲げて日本帝国万歳、月世界探検隊万歳を三唱する。

登場人物

冒頭部(原文より)

「どうしよう。」 と思うまもなく、六人の月世界探検者を乗せた空中飛行船翔鷲号は非常な速力で突進して月に落ち、大地震でも揺ったような激しい衝動をうけたと思うと、一行は悉く気絶して終った。 そもそもこの探検隊は目下日本で有名な否世界中に誰知らぬ者もないほどに有名な桂田工学博士と、これもその道にかけては頗る評判の月野理学博士とによって主唱され、それに両博士の助手が二名、及び星岡光雄、空知晴次といういずれも中学四年生の少年とで組織されているので、一行は桂田博士が発明した最新式の空中飛行船に乗じて、この試運転の第一着手として、吾が地球から最も近い月世界の探検を思い立ったのである。

「月世界跋渉記」江見水蔭(青空文庫)

末尾部(原文より)

といずれもその洞内に赴き、ありたけの蝋燭を点じてその中に坐り、各自にブランデーを注いだ洋盃を高く差し上げ、桂田博士の音頭で「日本帝国万歳※ 月世界探検隊万歳※」 を三唱すると、その声は遍く洞内に響き渡って、谺はさながら月がこの一隊を祝するように、「月世界探検隊万歳※」と唱え返した。

「月世界跋渉記」江見水蔭(青空文庫)

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