壁の眼の怪(江見水蔭)のあらすじ・登場人物
穴という穴から覗く村人の眼
- 怪奇
- 恋愛
- 文字数
- 7,253字
- 読了目安
- 約15分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 新潟県
- 山形県
この作品について
寛政五年、米沢藩の典薬・勝成裕の一行は、上杉鷹山の内意を受け、秘境と呼ばれる三面谷へ薬草採りに入る。同行した江戸の絵師は、川で髪を洗う美しい娘を見て心を奪われるが、他郷の男に見られた女は不運になるという村の迷信は、恐ろしい企みを生む。壁の穴という穴から無数の眼が覗く奇妙な光景と、秘境に残る因習を描いた怪異譚。結末は読者の想像にゆだねられる。
あらすじ
寛政五年六月、米沢藩の典薬勝成裕は、隠居の上杉鷹山の内意を受け、一行十五人で薬草採りと現状調査のため秘境三面谷へ入る。三面谷は越後村上領ながら米沢藩の支配も受け、毎年飯米を送る関係にあった。同行を願った江戸の絵師立花直芳は、川端の岩の上から、水浴して黒髪を洗う美しい娘を見かけて思わず写生し、気づかれて逃げられる。村一番の長者小池大炊之助の家に迎えられると、壁の穴や破れ障子という破れから村人の眼が無数に覗き、その中に底光りのする不気味な眼と、涼しく美しい眼があった。直芳は山の古宮で空から降ってきた毒蛇に襲われ、投げたのが先の娘小露だと知る。髪を洗うのを他郷の男に見られた女は一生不運になるため、見た者を殺せばよいという村の迷信があったのだ。直芳は迷信を捨てて江戸へ逃げようと熱く説き、自分の妻になってほしいと訴え、二人は心を通わせる。その夜、直芳と小露、村の若者手熊の六次三郎が姿を消す。翌日、勝成裕と大炊之助らは古宮から熊取路を捜し、熊の巣穴で刃物傷だらけの六次三郎の死体を見つけるが、直芳と小露は三日探しても見つからず、永久に行方知れずとなった。この秘事は成裕が門弟の中島三伯に語り、語り伝えられたという。
登場人物
- 勝成裕 米沢藩の典薬。上杉鷹山の内意で三面谷へ薬草採りに入る
- 立花直芳 江戸の若い絵師。三面谷の娘に心を奪われる
- 小露 三面谷一の美しい娘。髪洗いを見られ直芳を殺そうとする
- 小池大炊之助 三面谷の長者。平家の落武者の伝説を持つ家の主
- 六次三郎 三面谷の若者。小露の行方不明と同じ夜に姿を消す
- 佐平 一行の従者頭の老人
冒頭部(原文より)
寛政五年六月中旬の事であった。羽州米沢の典薬勝成裕が、御隠居上杉鷹山侯(治憲)の内意を受けて、一行十五人、深山幽谷に薬草を採りに分け入るという、その時代としては珍らしい計画が立てられた。 その最終の目的地点は東北の秘境、本朝の桃源にも比べられている三面谷であった。
「壁の眼の怪」江見水蔭(青空文庫)
末尾部(原文より)
永久、直芳小露の行方は知れぬのであった。しかし人里を出ておらぬ事だけは分るのであった。 この三面の秘事は、さすがに勝成裕も『中陵漫録』には記さなかったが、中島三伯という門弟に語ったのが、今日まで語り伝えられたのであった。
「壁の眼の怪」江見水蔭(青空文庫)
原文を読む
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