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奇怪な再会(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

犬と占いと妾宅の幻

  • 怪奇
  • 恋愛

芥川龍之介 1921年(大正10年)1月 「大阪毎日新聞夕刊」

文字数
20,975字
読了目安
約42分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

明治二十八年の本所を舞台に、陸軍の主計に囲われたお蓮が、拾った白い小犬や占い、幻覚に心を乱されていく怪異小説。結末は、友人の医者Kが「私」に語り聞かせる体裁を取る。大阪毎日新聞の夕刊に二か月にわたって掲載された。

あらすじ

明治二十八年の初冬、お蓮は陸軍の主計牧野に囲われ、本所の横網の妾宅で眼の悪い婆さんと暮らしている。彼女は以前の男を忘れられず、寝言で「金さん」と呼び、親戚の行方と偽って玄象道人に占ってもらう。卦は「二度とは遇えない。東京が森にでもなれば別だが」というものだった。その夜、台所に迷い込んだ白い小犬を飼い始めるが、牧野は犬を嫌い、小犬は昔飼っていた犬に不思議なほど似ていた。田宮が訪ねてきて昔話をしたあと、犬は病んで死に、鏡に映った屍骸の鼻先が赤く見える。年が明け、お蓮は幻覚に悩まされるようになり、牧野の妻が訪ねてきて「東京中が森になったら、お宅に置いてください」と告げる。松井町へ越したあと、田宮の冗談に激したお蓮は剃刀を取り出すが、朋輩の声に止められ、金さんは生きていて弥勒寺橋に来ると教えられる。翌晩、縁日の弥勒寺橋で植木を見て「森になった」とつぶやき、白い小犬を抱いて帰り、二階で金と再会する幻を見る。後日、医者のKは、お蓮が日清戦争中に威海衛の妓館にいた孟蓮という中国人で、いまはK脳病院の患者だと語る。

登場人物

冒頭部(原文より)

 お蓮が本所の横網に囲われたのは、明治二十八年の初冬だった。  妾宅は御蔵橋の川に臨んだ、極く手狭な平家だった。ただ庭先から川向うを見ると、今は両国停車場になっている御竹倉一帯の藪や林が、時雨勝な空を遮っていたから、比較的町中らしくない、閑静な眺めには乏しくなかった。が、それだけにまた旦那が来ない夜なぞは寂し過ぎる事も度々あった。 「婆や、あれは何の声だろう?」 「あれでございますか? あれは五位鷺でございますよ。」  お蓮は眼の悪い傭い婆さんとランプの火を守りながら、気味悪そうにこんな会話を交換する事もないではなかった。

「奇怪な再会」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

「それから一日か二日すると、お蓮――本名は孟蓮は、もうこのK脳病院の患者の一人になっていたんだ。何でも日清戦争中は、威海衛のある妓館とかに、客を取っていた女だそうだが、――何、どんな女だった? 待ち給え。ここに写真があるから。」  Kが見せた古写真には、寂しい支那服の女が一人、白犬と一しょに映っていた。 「この病院へ来た当座は、誰が何と云った所が、決して支那服を脱がなかったもんだ。おまけにその犬が側にいないと、金さん金さんと喚き立てるじゃないか? 考えれば牧野も可哀そうな男さ。蓮を妾にしたと云っても、帝国軍人の片破れたるものが、戦争後すぐに敵国人を内地へつれこもうと云うんだから、人知れない苦労が多かったろう。――え、金はどうした? そんな事は尋くだけ野暮だよ。僕は犬が死んだのさえ、病気かどうかと疑っているんだ。」

「奇怪な再会」芥川龍之介(青空文庫)

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