大森貝塚の発掘(江見水蔭)のあらすじ・登場人物
日本考古学の聖地を掘る
- 文字数
- 3,142字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 東京都
この作品について
日本で最初に発見された石器時代の遺跡・大森貝塚を、明治四十一年一月に発掘した日の記録。探検記『地中の秘密』の一章で、新聞記者の水谷幻花らとともに地主の邸内に入り、二条公爵や坪井博士を迎えて掘り進めるが、なかなか遺物が出ない。考古学の黎明期の熱気と、仲間うちの軽口がそのまま伝わる。
あらすじ
大森貝塚は、明治十二年にアメリカのモールスが日本で初めて石器時代の遺跡として発見し、大発掘をした場所だが、今は兒島惟謙翁の邸内に取り込まれて普通には掘れなかった。明治四十一年一月二十一日、水谷幻花と筆者の水蔭は、朝日新聞の杉村楚人冠の縁で兒島家の許しを得て、二条公爵や坪井博士の立ち会いのもと発掘する機会を得る。モールスが掘り尽くした庭後の地では土器が出ず、人足の勧めで笹山の後ろへ移ると貝層は良好だが、いくら掘っても破片と獣骨ばかりである。見物の杉村は焚火に当たりながら冷評を浴びせ、二人は負け惜しみを言い返す。遅れて来た二条公爵が自ら採集器具を取って「出た」と叫び、土偶かと一同が沸き立つが、洗うと焼けた大腿骨の関節部だった。昼食を挟んで鯨骨や石槌、打石斧の破片などを掘り出し、午後に来た坪井博士とは発掘より談話が盛んになる。そこへ中途で姿を消していた大瀧氏が、近所で拾った完全に近い磨製石斧を博士に差し出す。博士は、遅く来て少しも掘らなかった者が一番の勝利を得たと笑い、水蔭と水谷は頭を掻くしかなかった。後日譚として、杉村がボストンでモールスに会い、絵葉書に署名をもらって水蔭に寄せたため、水谷が自慢していた「天下一品」の署名が二品になる顛末が添えられる。
登場人物
- 江見水蔭 筆者。太古遺跡研究会の幹事で、水谷と並んで穴を掘る
- 水谷幻花 東京朝日新聞の記者で考古家。発掘を企画し、坪井博士や二条公爵に連絡する
- 二条公爵 華族人類学会の中心人物。自ら採集器具を取って掘る
- 坪井博士 人類学者。午後に来て談話に加わる
- 杉村楚人冠 朝日新聞の記者。兒島家との縁をつなぎ、焚火で見物しながら冷評する
- 大瀧氏 遅れて来て、近所で拾った磨製石斧を博士に出す
冒頭部(原文より)
大森の貝塚は、人類學研究者の眼から、最も神聖なる地として尊敬せられて居る。此所が本邦最初に發見せられた石器時代の遺跡であるからだ。 米國のエドワルド、エス、モールス氏が、明治十二年に於て、初めて此所に遺跡を發見し、然うして大發掘を試みられた記事は『理科會粹』の第一帙として、東京大學法理文學部から印行せられてある。
「大森貝塚の発掘」江見水蔭(青空文庫)
末尾部(原文より)
『然らば、天下二品なんだ。まア好いです』と余は慰めたが、或は又兒島氏や大瀧氏の處にも、天下一品が屆いて居はせぬか?
「大森貝塚の発掘」江見水蔭(青空文庫)
原文を読む
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