怪異暗闇祭(江見水蔭)のあらすじ・登場人物
闇夜に鼻を削ぐ祭の怪
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 12,923字
- 読了目安
- 約26分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
天保の頃、武州府中の六所明神の暗闇祭で、旗本の若者六人が鼻を削がれた。敵討を頼まれた怪剣士・小机源八郎は、夜目の利く泥棒と、天狗を名乗る山伏に出会い、三人で暗闇祭の怪事件の犯人を探すことになる。夜目の利く者たちの掛け合いが痛快な、探偵趣味のある時代短編。
あらすじ
天保九年五月五日、神影流の長沼正兵衛の門人で怪剣士と恐れられる小机源八郎は、同門の旗本の若者たちから敵討を頼まれる。前年、武州府中の六所明神の暗闇祭で、六人が鼻を削がれたのだ。祭は神輿渡御の間、町中の灯りを消して真の暗闇にする。源八郎は府中の茶屋で旅商人と飲み、夜目の利く泥棒・五郎助七三郎と知る。去年は女の尻の肉も斬られ、大名の愛妾の小指も切られたが、小指は七三郎のしわざで、鼻や尻は知らないという。社の裏山の大欅の上から現れたのは、常陸坊海尊の子孫と称する山伏・大竜院泰雲で、夜目は二人以上に利き、源八郎も七三郎も打ち負かされる。泰雲は七三郎の仲間を懲らしめただけで、鼻切りは知らなかった。三人は犯人を捕える眼力くらべを約し、暗闇祭の夜に散る。灯が戻ると今年も耳や鼻を切られた者が出ていた。七三郎が女に目を付け、血の付いた剃刀を持つ娘を気絶させて連れ帰った。娘は社家の長女で神楽の舞姫だった稲代で、五年前の祭の夜に若者たちから侮辱を受け、座敷牢に三年入れられるうちに夜目が利くようになり、世を呪って鼻や尻を斬っていたのだった。三人は同情し、約束どおり七三郎が酒を奢り、泰雲は拳固で頭を二つ殴られる。源八郎は夜目の利く男女の子に期待し、稲代を嫁に貰い受けたいと言い出す。
登場人物
- 小机源八郎 神影流長沼正兵衛の門人。奇蹟的に夜目が利く怪剣士
- 五郎助七三郎 夜目の利く泥棒。本名は七三郎
- 大竜院泰雲 武州御岳山の山伏。代々夜目が利くと称する天狗
- 稲代 社家葛城藤馬の長女。神楽殿の舞姫だった
- 長沼正兵衛 源八郎の師。神影流の達人
冒頭部(原文より)
天保の頃、江戸に神影流の達人として勇名を轟かしていた長沼正兵衛、その門人に小机源八郎というのがあった。怪剣士として人から恐れられていた。 「小机源八郎のは剣法の正道ではない。邪道だ。故に免許にはいまだ致されぬが、しかし、一足二身三手四口五眼を逆に行って、彼の眼は天下無敵だ。闇夜の太刀の秘術を教えざるにすでに会得している。怪剣士というは彼がことである」
「怪異暗闇祭」江見水蔭(青空文庫)
末尾部(原文より)
この変な敵討をよそに、小机源八郎は頻りに考え込んでいたが、やがて決心した体で、 「や、拙者はこの稲代殿を嫁に貰い受けたい」と云い出した。 これには泰雲も七三郎もびっくりした。余りにそれは突然に過ぎたからであった。源八郎は単に稲代の境遇に同情したばかりではないのであった。泰雲の夜目の利くのが代々であるというのから考えて夜目の利く男と、同じく夜目の利く女との相婚の結果、その子により以上夜目を利かして見たいという、そうした腹から出たのであった。
「怪異暗闇祭」江見水蔭(青空文庫)
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