海島冒険奇譚 海底軍艦(押川春浪)のあらすじ・登場人物
絶海の孤島に眠る、海底軍艦
- 冒険
- SF
- 文字数
- 123,860字
- 読了目安
- 約4時間8分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
明治三十三年、二十四歳の押川春浪が世に問うた冒険小説。インド洋で海賊船に襲われ、無人島に流れ着いた一行が、そこで日本海軍の櫻木大佐の建造していた海底戦闘艇「電光艇」と出会う。日本の冒険小説・空想科学小説の原点とされ、少年たちを熱狂させた一冊である。
あらすじ
世界漫遊の帰途、ナポリの港で旧友・濱島武文と再会した「私」は、彼の一家と、待命中の松島海軍大佐とともに日本へ向かう弦月丸に乗り込む。船中の音楽会や甲板の競走に沸いた航海は、インド洋にさしかかったところで一変する。潜水器と探海電燈を備えた海賊船の襲撃を受け、弦月丸は沈没。小さな端艇に取り残された「私」と濱島の一人息子・日出雄少年、そして水兵たちは、幾日も漂流したすえ、南方の無人島にたどり着く。島に人の気配があった。そこは、行方不明とされていた櫻木海軍大佐が三十七名の水兵とともに姿を消し、密かに海底の造船所を築いて新兵器「電光艇」を建造していた島だったのだ。三尖衝角と新式魚形水雷を備え、空気製造器を積んだ怪艇。島は「朝日島」と名づけられ、国際法にのっとって領有が宣言される。猛獣狩り、野球競技、輕氣球による脱出行——少年小説らしい奔放な挿話を重ねながら、物語は海賊の巣窟との決戦へと進んでゆく。帝国軍艦旗を掲げて帰航する軍艦「日の出」と電光艇の姿を、読者に向かって「旗を振り、万歳を三呼せられよ」と呼びかけて幕を閉じる、明治の熱気そのもののような一篇である。
冒頭部(原文より)
私が世界漫遊の目的をもつて、横濱の港を出帆したのは、既に六年以前の事で、はじめ亞米利加に渡り、それから大西洋の荒浪を横斷つて歐羅巴に遊び、英吉利、佛蘭西、獨逸等音に名高き國々の名所古跡を遍歴して、其間に月を閲すること二十有餘箇月、大約一萬五千里の長途を後にして、終に伊太利に入り、往昔から美術國の光譽高き、其さま/″\の奇觀をも足る程眺めたれば、之より我が懷かしき日本へ歸らんと、當夜十一時半拔錨の弦月丸とて、東洋行の船に乘組まんがため、國の名港ネープルスまで來たのは、今から丁度四年前、季節は櫻散る五月中旬の或晴朗な日の正午時分であつた。
「海島冒険奇譚 海底軍艦」押川春浪(青空文庫)
末尾部(原文より)
電光艇の觀外塔には、櫻木海軍大佐、武村兵曹、日出雄少年、他三十餘名の慓悍無双なる水兵あり。軍艦「日の出」の甲板には、艦長松島海軍大佐、虎髯大尉轟鐵夫君、濱島武文、春枝夫人、及び二百餘人の乘組あり。いづれも手に/\双眼鏡を携へ、白巾を振り、喜色を湛えて、諸君の好意を謝する事であらう。其の時は、私は、屹度、軍艦「日の出」の艦尾の方、八吋速射砲の横たはる邊、若くば水面高き舷門のほとりに立つて――恭しく――右手に高く兜形の帽子を揚げて、今一度、諸君と共に大日本帝國萬歳! 帝國海軍萬歳! を三呼しませう。
「海島冒険奇譚 海底軍艦」押川春浪(青空文庫)
名文
太平洋の波に浮べる、この船にも似たる我日本の國人は、今や徒らに、富士山の明麗なる風光にのみ恍惚たるべき時にはあらざるべし。
押川春浪『海底軍艦』のはしがきの冒頭。海に囲まれた日本を船にたとえ、海へ乗り出す気概を説く、明治の冒険小説らしい呼びかけ。
九時三十分、第二の砲聲と共に、我が驚く可き海底戰鬪艇は遂に海中に進水した。
孤島で秘密に建造された桜木海軍大佐の海底戦闘艇「電光艇」が、ついに進水する場面。物語が最も高揚する瞬間の一文。
原文を読む
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