浮かぶ飛行島(海野十三)のあらすじ・登場人物
南シナ海に浮かぶ鋼鉄の大要塞
- SF
- 冒険
- 文字数
- 124,009字
- 読了目安
- 約4時間8分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1938年(昭和13年)、雑誌「少年倶楽部」に1年間連載された海野十三の長編冒険SF。南シナ海に、列強の軍港をしのぐ巨大な人工島「飛行島」が建設されている。練習艦隊の機関大尉・川上は、その秘密を探るため、飛行島に乗り込んで消息を絶つ。やがて一人の二等水兵が、上官の行方を追い、単身で巨大な浮島の奥深くに潜入する。海上を動く要塞、超重爆撃機を載せた飛行甲板、国際的な陰謀と、当時の少年たちが夢中になった空想軍事科学の趣向が詰まった作品である。
あらすじ
欧州訪問を終えた練習艦隊の須磨・明石が南シナ海を北上していた夜、機関大尉の川上と同期の長谷部大尉は酒壜を挟んで語り合う。翌日、艦隊は海上に建設中の巨大な人工島「飛行島」に立ち寄る。ところがその夜、川上機関大尉が飛行島で行方不明になってしまう。島の司令官リット少将は無関係を言い張り、艦隊は釈然としないまま出港する。川上の部下だった杉田二等水兵は、上官の行方を求めて脱艦し、海を泳いで飛行島に潜入する。島には中国人のボーイや各国の労働者が入り乱れ、英国による世界的な軍事計画の秘密が隠されていた。島は三十五ノットで走り、超重爆撃機八十機を載せる巨大な航空母艦であり、背後には英国とソ連の同盟に基づく日本攻撃の作戦があった。変装して島に潜んでいた川上は杉田と力を合わせ、夜の嵐のなか、爆弾庫に命がけで飛び込んで飛行島を爆破する。
登場人物
- 川上機関大尉 練習艦明石の機関大尉。飛行島の秘密を探る
- 杉田二等水兵 川上の部下。脱艦して飛行島に潜入する
- 長谷部大尉 川上の同期で親友。艦の砲を預かる
- リット少将 飛行島建設団長。冷酷な英国の指揮官
冒頭部(原文より)
川上機関大尉の酒壜 わが練習艦隊須磨、明石の二艦は、欧州訪問の旅をおえて、いまやその帰航の途にあった。 印度を出て、馬来半島とスマトラ島の間のマラッカ海峡を東へ出ると、そこは馬来半島の南端シンガポールである。大英帝国が東洋方面を睨みつけるために築いた、最大の軍港と要塞とがあるところだ。 そのシンガポールの港を出ると、それまでは東へ進むとはいえ、ひどく南下航路をとっていたのが、ここで一転して、ぐーっと北に向く。 そこから、次の寄港地の香港まで、ざっと三千キロメートルの遠方である。その間の南北にわだかまる大海洋こそ、南シナ海である。
「浮かぶ飛行島」海野十三(青空文庫)
末尾部(原文より)
「杉田も、えらい奴だ。貴様が優しくて強いから、そんないい部下ができたのだ。結局やっぱり貴様がえらいということになるのだ。さあ、飛行島は、ついに爆破された。これで英国の間違った永い間の悪夢も、きっと覚め、東洋における大日本帝国の正しい地位を考えなおすことになろう」 その飛行島は、いま戦友に抱えられた川上機関大尉の肩越しに、ぐるっと一転して、前世紀の巨獣の頤のような組立鉄骨やおびただしい浮標をぬっとつきだし、最後の醜体をさらしたかと思うと、こんどは急に海底に吸いこまれるように、ずぶずぶと沈んでしまった。そしてそのあとには、凄じい水泡と大きな渦が、いつまでもぐるぐるまいていた。 それにしても飛行島の主、リット提督はどうなったであろうか。彼の行方を知っているものは、ただの一人もない、しいて知りたければ、かのブルー・チャイナ号のつきない怨をのせて、いつまでもぐるぐる廻っている、あの飛行島の沈んだあとの大きな渦巻に聞いてみるがいい。
「浮かぶ飛行島」海野十三(青空文庫)
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