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黄金の腕環(押川春浪)のあらすじ・登場人物

勇ましき者に黄金の腕環を

  • 冒険

押川春浪 1907年(明治40年)1月 「少年世界」

文字数
4,313字
読了目安
約9分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

日本SFの先駆者として知られる押川春浪が、1907年に雑誌「少年世界」に発表した短編。大みそかの夜、英国の貴族の別荘に、祖先伝来の黄金の腕環が届く。腕環を贈られるのは、三人の娘のうち「この年の暮にもっとも勇ましい振舞をした者」ひとりだけ。父の出した試験は、流星が落ちたという真夜中の森を探検してくることだった。副題の「流星奇談」どおり、怪談じみた夜の森を舞台に、本当の勇気とは何かを軽快に描く、少年少女向けの小さな冒険譚である。

あらすじ

英国の海岸の別荘で、老貴族の松浪伯爵は三人の美しい娘に怪談を語って聞かせていた。大みそかの夜、ロンドンの玉村侯爵から一個の黄金の腕環が届く。添えられた書付には、娘たちのうちこの年の暮にもっとも勇ましい振舞をした人にこの腕環を与え、さらに多くの宝物を得る幸運も授けるとあった。伯爵が試験の方法を考えあぐねていると、窓の外に巨大な流星が飛び、近くの森に消える。そこで伯爵は、三人にひとりずつ夜の森を奥まで探検させ、もっとも正確に様子を報告した者を勝者とすると告げた。長女と次女は森の入口で怖じ気づき、何も見なかったと偽って引き返してくる。末娘の露子だけは、父との約束を守って真っ暗な林に分け入り、樹の枝にさがる青い球燈と、その下に置かれた奇妙な箱を見つけて持ち帰る。それは伯爵が侯爵に頼まれて仕掛けた、勇気を試すための宝箱だった。

登場人物

冒頭部(原文より)

一 伯爵の別荘  流星の飛ぶのを見るのは、余り気味の好いものでは無い、シーンとした真夜中頃、青い光がスーと天空から落ちて来る有様は、恰も人魂でも飛んで来たよう、それが眼に入った瞬間は、誰でもハッと思い、流星の落ちたと覚しき淋しき場所へは、余程の勇士でも、何うも恐ろしくて行き兼ねると云う事だ。  然るにこの流星に関し、花の様に美しい一人の少女が、世にも面白い手柄を立てた話がある。  処は英国の或る海岸に、一軒の立派な家がある、之れは老貴族松浪伯爵の別荘で、伯爵は極く愉快な人物、それに三人の娘があって、いずれも絶世の美人と評判が高い。

「黄金の腕環」押川春浪(青空文庫)

末尾部(原文より)

「露子こそ最も勇ましき振舞をしたものだ、此腕環は和女の物である、爾して此箱も私が好奇の玉村侯爵の申込により、あの淋しい森林中に置いて、和女等三人の内、誰が一番勇ましいかを試したもの、侯爵の書面に『この腕環を得し人は、同時に更に多くの宝物を得べき幸運を有す』とあったのは、即ち勇気ある者が、此箱を取る事が出来ると云う事を意味するのだ、私は一つ此箱を開けて見せよう、之れも総て露子の物である」と云いつつ、隠袋から鍵を取出して其箱を開けば、中から出て来たのは、金銀宝玉の装飾品数十種、いずれも眩きばかりの珍品である。  一番目の娘も二番目の娘も、森林を探検し得なかった臆病が露顕して真赤になった。  明日はお正月! 露子は何の様に楽しい事であろう。

「黄金の腕環」押川春浪(青空文庫)

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