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月世界探険記(海野十三)のあらすじ・登場人物

父を探して月へ

  • SF
  • 冒険

海野十三 1938年(昭和13年)

文字数
14,351字
読了目安
約29分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

月世界探険に旅立つ新宇宙艇の乗組員たちを描く、海野十三の少年向け空想科学小説。通信係の少年・六角進が、10年前に月へ飛んだまま行方不明となった父を探して、宇宙艇に乗る。出発直前の殺人事件から始まり、宇宙旅行、月面の怪現象、無引力空間と、驚きの連続でつづられる短い冒険譚である。

あらすじ

東京郊外の砧で、月世界探険の新宇宙艇は出発の準備を終えていた。通信係の少年・六角進は、10年前にロケットで月へ向かったまま消息を絶った父、六角博士の跡を探すため艇に乗る。ところが出発直前に殺人が起こり、乗組員のあいだには疑惑が生じる。宇宙艇は月世界に到達するが、「危難の海」に現れた白い斑点は思いがけない存在だった。絶望的な状況の中、一行は乗り逃げをもくろむ者の裏切りに遭い、無引力空間へと投げ出される。

登場人物

冒頭部(原文より)

新宇宙艇  月世界探険の新宇宙艇は、いまやすべての出発準備がととのった。  東京の郊外の砧といえば畑と野原ばかりのさびしいところである。そこに三年前から密かにバラック工場がたてられ、その中で大秘密のうちに建造されていたこのロケット艇は、いまや地球から飛びだすばかりになっていた。魚形水雷を、潜水艦ぐらいの大きさにひきのばしたようなこの銀色の巨船は、トタン屋根をいただいた梁の下に長々と横たわっていた。頭部は砲弾のように尖り、その底部には、缶詰を丸く蜂の巣がたに並べたような噴射推進装置が五層になってとりつけられ、尾部は三枚の翼をもった大きな方向舵によって飾られていた。銀胴のまん中には、いまポッカリと丸い窓が明いている。いや窓ではない。人間が楽にくぐれるくらいの出入口なのだ。その出入口をとおして、明るい室内が見える。電気や蒸気を送るためのパイプが何本となく壁を匍いまわり配電盤には百個にちかい計器が並び、開閉器やら青赤のパイロット・ランプやら真空管が窮屈そうに取付けられていて、見るからに頭の痛くなるような複雑な構造になっていた。

「月世界探険記」海野十三(青空文庫)

末尾部(原文より)

 そこで二人は艇内をこじあけて工具をとり出し、パイプと電線とを外から修理して接ぎあわせ、そして新宇宙艇を再び操縦して地球へ急いだが、快速のため、蜂谷艇長の一行よりも早く帰りついたのだった。  猿田は艇内でピストル自殺をしていた。器械が動かなくなったので、観念したのだろうと思う。  全国の新聞やラジオは、進少年や密航記者佐々砲弾の愕くべき奇蹟を大々的に報道した。すると祝電と見舞の電報とが、山のように二人の机上に集った。それは日本ばかりではなく、遠くベルリンやローマから、またロンドンやニューヨークからのものがあった。その大きな同情は、いま月世界に病む進君の父六角博士をぜひ救い出さねばならぬという声にかわっていった。この分では老博士救助の新ロケットが飛びだす日もそう遠くはあるまい。

「月世界探険記」海野十三(青空文庫)

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