海底都市(海野十三)のあらすじ・登場人物
夢か現か、未来の海底へ
- SF
- 冒険
- 文字数
- 84,118字
- 読了目安
- 約2時間48分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
焼け跡の廃墟の丘で奇妙な予言の手紙を受け取った学生の「僕」が、不思議な体験を通して、深い海の底に築かれた未来都市へ迷い込む。海野十三が戦後に書いた、タイム・マシンと海底都市を題材にした少年向けSF冒険長編。大規模な海溝工事、原子エンジン、乾いた海溝底の町など、当時としては大胆な科学的空想が随所に盛り込まれている。
あらすじ
戦後の焼け野原。寄宿舎に住む学生の本間君は、先の日付で書かれたふしぎな手紙を次々と受け取り、ついに廃墟の丘で奇怪な事態に巻き込まれる。気がつくと彼は、巨大な海底都市の中にいた。そこでは人々が海溝の底に町を築き、原子エンジンや考古学教室など、進んだ科学の恩恵のもとで暮らしている。彼はこの都市の人々と交わり、陰謀や水圧嵐の危機、そして思いがけない再会を経験するが、最後には意外な現実へと引き戻される。
登場人物
- 僕(本間) 不思議な手紙に導かれ、海底都市へ迷い込む学生
- カビ博士 海底都市の事情を知る博士。学友・辻ヶ谷と同じ顔をもつ
- タクマ少年 海底都市で僕と親しくなる少年
- 辻ヶ谷 僕の学友。タイム・マシンの装置を扱う
冒頭部(原文より)
妙な手紙 僕は、まるで催眠術にかかりでもしたような状態で、廃墟の丘をのぼっていった。 あたりはすっかり黄昏れて広重の版画の紺青にも似た空に、星が一つ出ていた。 丘の上にのぼり切ると、僕はぶるぶると身ぶるいした。なんとまあよく焼け、よく崩れてしまったことだろう。巨大なる墓場だ。犬ころ一匹通っていない。向うには、焼けのこった防火壁が、今にもぶったおれそうなかっこうで立っている。こっちには大木が、黒焦げになった幹をくねらせて失心状態をつづけている。僕の立っている足もとには、崩れた瓦が海のように広がっていて、以前ここには何か大きな建物があったことを物語っている。
「海底都市」海野十三(青空文庫)
末尾部(原文より)
すっかり疲れてしまって、今は何を考える余裕もない。カビ博士が最後に僕にいった「深い事情」の謎も、気にはなるが、まだ解いてはいない。 しかしふと気がついたのは、僕の寿命は、あの婦人が僕に会いに来るすこし以前に終ったのではなかろうか。しかもそれはあの海底都市ではなく、他の場所で終焉を迎えたのではなかろうか。それをカビ博士は知っているが、僕の妻君は、まだそれに気がついていないという場合ではないのだろうか。 いずれ疲労がなおったら、このことを筋道だてて考えてみるつもりである。ともかく今は休養のひと眠りが僕に必要なのだ。
「海底都市」海野十三(青空文庫)
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