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南国太平記(直木三十五)のあらすじ・登場人物

阿毘遮魯迦法による人命調伏じゃ

  • 歴史

直木三十五 1930年(昭和5年)6月 「東京日日新聞」

文字数
492,950字
読了目安
約16時間26分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 鹿児島県

この作品について

1930年(昭和5年)から翌年まで「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」に連載され、直木三十五を流行作家にした代表作。幕末の薩摩藩を揺るがしたお由羅騒動を題材に、島津斉彬を推す一党と、側室の子・久光を擁する一派との暗闘を描く。冒頭から立ち上るのは、兵道家・牧仲太郎が修する調伏の呪法である。呪いと刺客、藩の重臣と下級武士、そして西郷や大久保ら若者たちの息吹。大衆文学が確固たる地位を築いた記念碑的作品であり、直木賞の名の由来となった作者の名を不朽にした。

あらすじ

早朝の山道を、島津家の兵道家・加治木玄白斎が高弟の和田仁十郎を連れて登ってゆく。薬草を採る道すがら、首を切り取られた犬を抱えた猟師とすれ違った。昨夜、岩のあたりで焚火をする者があり、吠えかかった犬がそのまま戻らなかったのだという。谷間に突き出した岩へ着いた玄白斎は、焚木の桑の枝、蘇合香と竜脳の匂い、塩、そして蛇の皮を見つけ、顔色を変える。「阿毘遮魯迦法によって、忿怒曼徳迦明王を祭った、人命調伏じゃ。この法を知る者は、牧の外にない」——牧仲太郎は江戸へ上っていた。呪詛の的は、藩主の座を継ぐべき島津斉彬の世子である。斉彬を推す一派と、お由羅の方が産んだ久光を担ぐ一派。薩摩七十七万石を二つに割った暗闘は、呪法と刺客と謀略を巻き込んで、やがて藩を挙げての大粛清へとなだれ込んでゆく。その渦のなかで、益満休之助ら軽輩の若者たちは、斉彬の遺志を継ぐべく江戸へと旅立つ。

登場人物

冒頭部(原文より)

呪殺変  高い、梢の若葉は、早朝の微風と、和やかな陽光とを、健康そうに喜んでいたが、鬱々とした大木、老樹の下蔭は、薄暗くて、密生した灌木と、雑草とが、未だ濡れていた。  樵夫、猟師でさえ、時々にしか通らない細い径は、草の中から、ほんの少しのあか土を見せているだけで、両側から、枝が、草が、人の胸へまでも、頭へまでも、からかいかかるくらいに延びていた。

「南国太平記」直木三十五(青空文庫)

末尾部(原文より)

 行く者は、東へ、送る者は、城下へ。それは、長い距離を離れていたが、心は一つであった。斉彬の死によって、一新した心は、斉彬の遺志を展べさすために、十分の熱と、力とをもっていた。  関所を抜けたらしく、四人の姿は、牧を追って山内と闘った道の辺に、小さく見えて来た。もう、声は届かなかったが、お互に、手を挙げ、手を挙げしながら――遠ざかり、曲り、そして、別れてしまった。

「南国太平記」直木三十五(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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