野宿(山之口貘)のあらすじ・登場人物
居候のくせに留守番ができない
- 文字数
- 7,882字
- 読了目安
- 約16分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
山之口貘が、居候先の幽霊じみた家で、居候仲間とともに過ごした日々をとぼけた筆致で書いた散文。居候のくせに留守番もできないという自嘲と、貧しい暮らしの中の人づきあいが、軽やかな文体で綴られる。
あらすじ
あとから聞いた話では、ずっと前にそこに住んでいた家の娘が、毒を飲んで便所で死んでいたという噂のある家である。近所のおかみさんによれば、この家に引っ越してくる人はみな四、五日もいないうちに出ていくのに、「お宅が一番ながい」という。「ぼく」は居候のくせにと自分でも思いながら、一人で留守番ができず、波里さんが出かけるたびにいっしょに出かけ、いっしょに帰ってくる。用足しによっては、ぼくがいっしょでは都合のわるい時もある。結びでは、牛乳屋さんが振り返って通り過ぎ、土管の転がる空き地の向こうに目白の女子大学の門が立っているのを、亀重君に指差して教える。
冒頭部(原文より)
あとになって、きいたことなのであるが、ずっと前にそこに住んでいたうちの娘さんが、毒をのんで便所のなかで死んでいたという噂のある家なのである。近所のおかみさんの話によると、この家に引っ越してくる人は、みんな、四五日も居たか居ないかのうちに、すぐにまたどこかへ引っ越して行くんだそうで、
「野宿」山之口貘(青空文庫)
末尾部(原文より)
翌朝、土管の両端から、ふたりがのそのそと出ると、牛乳屋さんが振り向き振り向き通り過ぎて行った。ごろごろ転がっている土管の外れに気がつくと、そこには門が立っていた。こんなところに、目白の女子大学はあったのかと、ぼくはそうおもいながら、 「あれが、目白の女子大学なんだ」と云って、亀重君に指差して見せたのである。 (「群像」一九五〇年九月号)
「野宿」山之口貘(青空文庫)
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