山之口貘詩集(山之口貘)のあらすじ・登場人物
うしろを振りむくと 親である
- 文字数
- 18,891字
- 読了目安
- 約38分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 舞台
- 沖縄県
この作品について
沖縄に生まれ、二十年におよぶ放浪と極貧のなかで詩を書きつづけた山之口貘の自選詩集。貧乏、結婚、故郷——重い主題を、飄々としたユーモアと透きとおった口語で歌う。「うしろを振りむくと親である」に始まる「喪のある景色」など、一度読むと忘れられない詩が並ぶ。
あらすじ
「うしろを振りむくと/親である/親のうしろがその親である」——巻頭の「喪のある景色」は、そんな数行から始まる。ふり返れば親の親の親ばかりが昔の奥へと続き、前を見れば子の子の子ばかりが未来の涯へと続いてゆく。そんな景色のなかに、「神のバトンが落ちてゐる/血に染まつた地球が落ちてゐる」。続く「世はさまざま」では、人は米を食い、自分と同じ名の貘という獣は夢を食い、羊は紙を食い、南京虫は血を吸い、人には人を食いに来る人もいる、と並べたてたのち、琉球には墓場に立って泣く声や涙で育つ木があると歌う。「疊」では、なにもなかった畳の上に、結婚生活を呼び呼びして、夫になった僕が、女房になった女が、桐の箪笥が、薬罐が、火鉢が、鏡台が、次々にあらわれる。「炭」では、炭を買いに行った先で「炭はない」と言う炭屋のおやじの、いま炭の中から出てきたばかりの黒い手足と黒い顔が描かれる。どれも、極貧の暮らしそのものを題材にしながら、恨みも自己憐憫もない。むしろ自分をも笑いの対象にしてしまう距離感が、貘の詩をどこまでも軽やかにしている。詩集の配列は、巻末から巻頭へと製作順に並べられており、読み進むほどに詩人の初期へと遡ってゆく構成になっている。
冒頭部(原文より)
喪のある景色 うしろを振りむくと 親である 親のうしろがその親である その親のそのまたうしろがまたその親の親であるといふやうに 親の親の親ばつかりが むかしの奧へとつづいてゐる まへを見ると まへは子である
「山之口貘詩集」山之口貘(青空文庫)
末尾部(原文より)
こんな景色のなかに 神のバトンが落ちてゐる 血に染まつた地球が落ちてゐる 世はさまざま 人は米を食つてゐる ぼくの名とおなじ名の 貘といふ獸は 夢を食ふといふ
「山之口貘詩集」山之口貘(青空文庫)
名文
歩き疲れては 夜空と陸との隙間にもぐり込んで寢たのである 草に埋もれて寢たのである ところ構はず寢たのである
「生活の柄」の冒頭。野宿の日々を淡々と重ねたうえで、秋が来れば眠れないと嘆く、沖縄出身の詩人の代表作。
原文を読む
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