農民芸術概論綱要(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
世界ぜんたいの幸福を求める芸術論
- 文字数
- 2,624字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字旧仮名
- 舞台
- 岩手県
この作品について
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」——宮沢賢治の思想をもっとも直接に伝える一文がここにある。羅須地人協会で農民たちに語るために書かれた講義の綱要で、労働と芸術と信仰を一つに結ぼうとする賢治の理想が、箴言のような短い行の連なりで示される。「永久の未完成これ完成である」の結語も名高い。
あらすじ
「おれたちはみな農民である ずゐぶん忙がしく仕事もつらい/もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい」——序論はそう語りかけて始まる。近代科学の実証と求道者の実験と、われらの直観が一致するところで論じたい。そして中心に置かれるのが、「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という一行である。かつて師父たちは乏しいながらも楽しく生き、そこには芸術も宗教もあった。しかし今、われらにはただ労働と生存があるばかりで、宗教は疲れて冷たい科学に置き換えられ、芸術はわびしく堕落した。だからこそ「芸術をもてあの灰色の労働を燃せ」と賢治は説く。以下、農民芸術の本質・分野・制作・産者・批評へと論は進み、日々の暮らしそのものを一つの巨大な芸術に創りあげようという構想が示される。「ここは銀河の空間の太陽日本 陸中国の野原である」。そして結論では、われらに要るのは銀河を包む透明な意志と巨きな力と熱であるとされ、「われらの前途は輝きながら嶮峻である」「詩人は苦痛をも享楽する」と続けて、「永久の未完成これ完成である」の一行で締めくくられる。理解を了えればこうした論も棄てるがよい、ここにはただ一九二六年の宮沢賢治の考えがあるのみである、と。
冒頭部(原文より)
序論 ……われらはいっしょにこれから何を論ずるか…… おれたちはみな農民である ずゐぶん忙がしく仕事もつらい もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい われらの古い師父たちの中にはさういふ人も応々あった 近代科学の実証と求道者たちの実験とわれらの直観の一致に於て論じたい 世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
「農民芸術概論綱要」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
結論 ……われらに要るものは銀河を包む透明な意志 巨きな力と熱である…… われらの前途は輝きながら嶮峻である 嶮峻のその度ごとに四次芸術は巨大と深さとを加へる 詩人は苦痛をも享楽する 永久の未完成これ完成である 理解を了へばわれらは斯る論をも棄つる 畢竟ここには宮沢賢治一九二六年のその考があるのみである
「農民芸術概論綱要」宮沢賢治(青空文庫)
名文
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
「序論」の一節。自分だけの幸福を世界全体から切り離さず、人々の生活と芸術をともに考えようとする賢治の姿勢を、まっすぐに示している。
原文を読む
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