おばけの声(柳田国男)のあらすじ・登場人物
おばけは何と鳴くかを問う妖怪学
- 文字数
- 2,461字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
柳田国男の随筆。「おばけは何と鳴くか」——この素朴な問いから出発して、地方ごとに異なる化物の鳴き声(モー、ガンゴ、カモーなど)を比べ、その背後にある古い信仰の姿を探る、民俗学的な妖怪論である。
あらすじ
オバケ研究の専門雑誌が盛岡から出ようとしている——柳田国男はそんな話題から筆を起こす。化物はきわめて古い世相の一つだが、それを観ようとする態度だけが、この頃ようやく新しくなり始めた。柳田は、「あるものかないものか」を問うのではなく、もっと単純で実際的な問いから出発せよと説く。すなわち、「ばけ物は何と鳴くか」。関東から奥羽・北陸にかけては、化物は牛のように「モー」と鳴くと信じられている。九州には「ガンゴ」「ガモ」「ガモジョ」といった鳴き声があり、紀州や飛騨には「ガモチ」「ガガモ」がある。柳田は、これらを比べることで、化物が最初は「かもう(噛もう)」と名乗って現れていた、という古い姿を推測する。人が化物を怖れなくなるにつれ、「かもう」では足りず「取って食おう」と言わねば怖がらなくなった——ただ一語の鳴き声からでも、昔の人の感覚が推し量れる。素朴な問いから深い民俗学へと分け入る、柳田の妖怪随筆である。
冒頭部(原文より)
一 オバケ研究の専門雑誌が、最近に盛岡から出ようとしている。又宮崎県の郷土志資料には、あの地方の妖怪変化の目録が、先々月から連載せられている。ばけ物はもちろん至って古い世相の一つではあるが、それを観ようとする態度だけがこの頃やっとのことで新しくなり始めたのである。
「おばけの声」柳田国男(青空文庫)
末尾部(原文より)
人が既にオバケを怖れぬようになって、「かもう」ぐらいではこわさがたらず、「取って食おう」とでもいわないと、相手がオバケだとも思わぬようになってしまった。(……)しかもただこれだけの単に一語からでも、なおばけ物に対する以前の感覚は推測しえられるのである。
「おばけの声」柳田国男(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。