アプリで読む

無料・登録不要

おばけずきのいわれ少々と処女作(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

迷信家が語る処女作の頃

泉鏡花 1907年(明治40年)5月

文字数
4,677字
読了目安
約9分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

泉鏡花の随筆。自らを迷信家と称し、観音力と鬼神力という二つの超自然力への信仰を語る。続いて、師の尾崎紅葉のもとでの修業時代の逸話をたどりながら、処女作「冠弥左衛門」が世に出た経緯を振り返る。明治40年(1907)5月の成立。

あらすじ

筆者はまず自分を迷信家とし、世には観音力と鬼神力という二つの大きな超自然力があると信じている、と述べる。妖怪変化は鬼神力の現れだが、観音力を念じていれば畏れることはない。観音経は意味よりも音調がありがたく、文章の命も半ば以上は音調にあると考える。続いて、横寺町の先生の家にいたころ、先生の原稿をポストに入れるたびに三度ポストを回らないと安心できず、先生に一喝されて癖が直った話、父の訃報で帰郷し、貧しさのなか自殺を思った時期に「鐘声夜半録」を書き、先生から励ましの返事をもらった話を語る。日清戦争当時の文士の窮状にもふれ、最初に活字になった作は京都の新聞の「冠弥左衛門」であり、その後「活人形」「聾の一心」「鐘声夜半録」「義血侠血」「予備兵」「夜行巡査」と続いたと順を追って整理する。

冒頭部(原文より)

 僕は随分な迷信家だ。いずれそれには親ゆずりといったようなことがあるのは云う迄もない。父が熱心な信心家であったこともその一つの原因であろう。僕の幼時には物見遊山に行くということよりも、お寺詣りに連れられる方が多かった。

「おばけずきのいわれ少々と処女作」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 されば僕の作で世の中に出た一番最初のものは「冠弥左衛門」で、この次に探偵小説の「活人形」というのがあり、「聾の一心」というのがある。「聾の一心」は博文館の「春夏秋冬」という四季に一冊の冬に出た。そうしてその次に「鐘声夜半録」となり、「義血侠血」となり、「予備兵」となり、「夜行巡査」となる順序である。

「おばけずきのいわれ少々と処女作」泉鏡花(青空文庫)

名文

僕は明かに世に二つの大なる超自然力のあることを信ずる。これを強いて一纏めに命名すると、一を観音力、他を鬼神力とでも呼ぼうか、共に人間はこれに対して到底不可抗力のものである。

談話の書き出し。お化けを好む理由を「観音力」と「鬼神力」という二つの超自然力で説明する、鏡花の世界観を知る手がかりとして引かれる一節。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品