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尾崎紅葉とその作品(田山花袋)のあらすじ・登場人物

紅葉の芸術を同時代の目で語る

田山花袋 1912年(大正元年)6月 「太陽」

文字数
7,643字
読了目安
約15分
表記
新字旧仮名

この作品について

『色懺悔』『心の闇』『三人妻』『多情多恨』『金色夜叉』など、尾崎紅葉の代表作をたどりながら、その文章への苦心、通俗の人情にとどまる主観、言文一致の試み、硯友社を率いた手腕と早すぎる死までを七章で論じた田山花袋の紅葉論。若い日に紅葉と親しく交わった作家による、同時代の目から見た評価。

あらすじ

田山花袋が、尾崎紅葉の作品と人となりを七章にわたって論じた評論。紅葉の文章への苦心は並外れており、「紅葉の文、露伴の想」とも言われたと語り起こす。『夏痩』『おぼろ舟』『心の闇』などでは、弱い者や犠牲になった者のために泣く普通の人間の同情が作者の主観で、通俗の道徳の境から出なかったと見る。言文一致では『二人女房』『紫』『多情多恨』と試みを重ね、『三人妻』を文章の頂点、『多情多恨』を芸術の最頂点とする一方、『伽羅枕』は西鶴の『一代女』には遠く及ばないとする。三十年以後は非難が増し、『多情多恨』は読者に受けなかったこと、『金色夜叉』を紅葉が「どうせお芝居」と語っていたことも伝える。さらに、硯友社の団結力と後進に門戸を開いた紅葉の指導力を挙げ、若い世代が自由な個人の芸術へ走り出す時代に、辞世を残して世を去ったと結ぶ。

登場人物

冒頭部(原文より)

『色懺悔』『夏痩』あたりから、私は紅葉の作物を手にした。矢張、毎朝『読売』の一回を楽んだ方で、『おぼろ舟』のお藤『心の闇』のお粂などは、長い間忘れられないほどの印象を私の頭脳に残して居た。

「尾崎紅葉とその作品」田山花袋(青空文庫)

末尾部(原文より)

 箇人の生活、箇人の芸術、箇人の気分といふことの言はれ初めた時代に於て――箇人の道徳、箇人の自由といふ観念の徐々芽を出し始めた時代に於て、かれは『死なば秋露のひぬまぞおもしろき』といふ感興を貴んだ旧式な辞世を残して、盛なる友誼と盛なる師弟の恩義と盛なる社交の空気との中に溘然としてこの世を去つて行つた。

「尾崎紅葉とその作品」田山花袋(青空文庫)

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