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志賀直哉氏の作品(菊池寛)のあらすじ・登場人物

同時代に志賀氏がいるということ

菊池寛 1918年(大正7年)11月

文字数
4,967字
読了目安
約10分
表記
新字新仮名

この作品について

「自分は現代の作家の中で、一番志賀氏を尊敬している」——菊池寛が惜しみない敬愛をこめて書いた志賀直哉論。自然主義のリアリズムとの違い、切り詰められた表現の厳粛さ、そして「短篇は世界的レヴェルに行っている」という断言まで。同時代の作家が同時代の作家を語った、熱のこもった短い評論である。

あらすじ

「自分は現代の作家の中で、一番志賀氏を尊敬している。尊敬しているばかりでなく、氏の作品が、一番好きである」——菊池寛はそう断言してこの文章を始める。「白樺」創刊のころから六、七年、他の多くの作家には幻滅したり愛想を尽かしたりしたが、志賀直哉への気持ちだけは変わらない。だからこれは批評ではなく、感じていることを述べるだけだ、と。菊池が見る志賀の本質はリアリズムである。だがそれは自然派のリアリズムとは似ても似つかない。些末事をゴテゴテと並べる書き手に比べ、志賀の表現には厳粛で手堅い選択があり、惜しみ過ぎると思われるほど筆を惜しむ。描かねばならぬ事しか描かず、事象の急所をグイグイと書く。その力強さが、文章に緊張をもたらしているのだ、と。人生観の面でも、志賀は感傷や理屈で人生を曇らせず、生きた事実そのものを見つめている、と菊池は評する。そして具体的な作品評へ移り、「老人」「出来事」「清兵衛と瓢箪」を絶賛し、「赤西蠣太」「正義派」はやや落ちるかと率直に記す。鴎外の訳した外国短篇集より志賀のもののほうが優れていることも珍しくない、日本の文壇は外国のものなら無条件によいとするが、そんな馬鹿な話はない、と気炎を上げる。「ともかく、自分の同時代の人として志賀氏がいるという事は、如何にも頼もしくかつ欣ばしい事だと自分は思う」。

冒頭部(原文より)

 自分は現代の作家の中で、一番志賀氏を尊敬している。尊敬しているばかりでなく、氏の作品が、一番好きである。自分の信念の通りに言えば、志賀氏は現在の日本の文壇では、最も傑出した作家の一人だと思っている。

「志賀直哉氏の作品」菊池寛(青空文庫)

末尾部(原文より)

 色々まだ言いたい事があるが、ここで止めておこう。ともかく、自分の同時代の人として志賀氏がいるという事は、如何にも頼もしくかつ欣ばしい事だと自分は思う。  最後にちょっと言っておくが、自分はこの文章を、志賀氏の作品に対する敬愛の意を表するためにのみ書いたのである。

「志賀直哉氏の作品」菊池寛(青空文庫)

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