神州纐纈城(国枝史郎)のあらすじ・登場人物
人間の血で染めたような紅い色
- 幻想
- 歴史
- 文字数
- 188,180字
- 読了目安
- 約6時間16分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 山梨県
この作品について
1925年(大正14年)から翌年にかけて「苦楽」に連載された国枝史郎の代表作。未完のまま中断しながら、伝奇小説の最高峰と称される。永禄元年の甲府、朧の春の夜に、武田家家臣の土屋庄三郎は怪しい老人から真紅の布を買わされる。人の血で染めたような色を恐れて誰も買わなかったというその布に織り込まれていたのは、十六年前に失踪した父の名だった。富士山麓の湖に浮かぶ纐纈城、仮面の城主、病み崩れた人々——怪奇と幻想と耽美が渦を巻く絢爛たる物語世界が、ここから立ち上がる。
あらすじ
永禄元年、朧の春の夜。武田家家臣・土屋庄三郎は、花を見ようと甲府の条坊を歩き、神明の社の境内で一人の老人に呼び止められる。深紅の布を買ってくれというのだ。若い女子の喜びそうな色だと言う庄三郎に、老人は、どの屋敷でも「恐ろしい」と言われて買ってもらえなかったと答えた。人間の血で染めたような、燃え立つばかりの紅い色が恐ろしいのだという。笑って太鼓判一枚を投げ与えた庄三郎だが、月にすかして布を眺めたとき、思わず身震いをした。そこには、十六年前に謎の失踪を遂げた父・庄八郎昌猛の名が織り込まれていたのである。この夜買った紅巾の祟りから、庄三郎の身の上には幾多の波瀾が重畳する。富士の裾野の湖に浮かぶ纐纈城、仮面をつけた城主、血を搾られる人々、陀羅尼の呪法を操る者たち。武田信玄を中心とする戦国の甲斐を舞台に、怪異と妄執の糸が幾重にも絡み合ってゆく。
登場人物
- 土屋庄三郎昌春 武田信玄の家臣。紅巾を買ったことから怪異に巻き込まれる
- 布売りの老人 神明の社で庄三郎に深紅の布を売りつけた者
- 纐纈城主 富士の湖上の城にあって、仮面で顔を隠している人物
- 土屋庄八郎昌猛 庄三郎の父。十六年前に謎の失踪を遂げた
- 武田信玄(晴信) 甲斐の主君。庄三郎が仕える
冒頭部(原文より)
第一回 一 土屋庄三郎は邸を出てブラブラ条坊を彷徨った。 高坂邸、馬場邸、真田邸の前を通り、鍛冶小路の方へ歩いて行く。時は朧ろの春の夜でもう時刻が遅かったので邸々は寂しかったが、「春の夜の艶かしさ、そこはかとなく匂ひこぼれ、人気なけれど賑かに思はれ」で、陰気のところなどは少しもない。
「神州纐纈城」国枝史郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
ブルブル顫えている五本の指! その母指と食指とが、辛うじて仮面の頤へかかり、しばらく躊躇したかと思うと、ポッと仮面が顔から離れた。 (未完)
「神州纐纈城」国枝史郎(青空文庫)
原文を読む
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