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往生絵巻(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

阿弥陀仏を呼びつづける入道

  • 歴史
  • 幻想

芥川龍之介 1921年(大正10年)4月 「国粋」

文字数
3,097字
読了目安
約6分
表記
新字旧仮名

この作品について

金鼓を叩いて「阿弥陀仏よや。おおい。おおい」と呼びながら西へ歩く、多度の五位の入道を、道行く人々の声で描いた戯曲形式の短編。今昔物語集の五位の出家譚に取材している。

あらすじ

金鼓を叩きながら「阿弥陀仏よや。おおい。おおい」と叫んで歩く法師を、鮓売りや薪売りら市井の人々が、気違いか上人かと噂する。法師は多度の五位で、殺生好きの悪人だったが、講師の説法を聞いて阿弥陀仏が恋しくなり、講師に刀を突きつけて在処を問い詰め、出家したという。西へ向かう五位は海辺に至り、松の枯木の梢に登って、なお阿弥陀仏の名を呼び続ける。七日後、通りかかった老法師が見ると、五位は息絶えており、その口には白い蓮華が開き、異香が漂っていた。老法師は、物狂いと思った相手が尊い上人だったと悟り、念仏を唱える。

登場人物

冒頭部(原文より)

童 やあ、あそこへ妙な法師が来た。みんな見ろ。みんな見ろ。 鮓売の女 ほんたうに妙な法師ぢやないか? あんなに金鼓をたたきながら、何だか大声に喚いてゐる。…… 薪売の翁 わしは耳が遠いせゐか、何を喚くのやら、さつぱりわからぬ。もしもし、あれは何と云うて居りますな? 箔打の男 あれは「阿弥陀仏よや。おおい。おおい」と云つてゐるのさ。

「往生絵巻」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

老いたる法師 この儘梢に捨てて置いては、鴉の餌食にならうも知れぬ。何事も前世の因縁ぢや。どれわしが葬うてやらう。――や、これはどうぢや。この法師の屍骸の口には、まつ白な蓮華が開いてゐるぞ。さう云へば此処へ来た時から、異香も漂うてはゐた容子ぢや。では物狂ひと思うたのは、尊い上人でゐらせられたのか。それとも知らずに、御無礼を申したのは、反へす反へすもわしの落度ぢや。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。

「往生絵巻」芥川龍之介(青空文庫)

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