二日物語(幸田露伴)のあらすじ・登場人物
西行、二つの夜の邂逅
- 歴史
- 幻想
- 文字数
- 18,841字
- 読了目安
- 約38分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 香川県
- 奈良県
この作品について
幸田露伴が若き日に発表した、西行を主人公とする二つの短編「此一日」「彼一日」を一冊にまとめた作品。「此一日」では、讃岐に庵を結んだ西行が、崇徳院の御陵を訪ねて怨霊と対峙する。「彼一日」では、長谷寺の観音堂で夜通しの勤行をする西行が、出家後に別れた妻と思いがけず出会う。文語調の雅俗折衷体で、仏道への専心と断ち切れぬ人の情とのあわいを描く。
あらすじ
「此一日」。出家した西行は諸国を行脚して讃岐に庵を結び、庭の松を友として暮らしている。ある日、保元の乱に敗れ、この地で崩じた崇徳院の命日が近いことを思い出し、白峯の御陵を訪ねる。荒れた陵の前で涙にくれて経を誦すると、院の霊が現れ、世に捨てられた恨みと、仏の教えを退けて天下を修羅道に変えようとの憤りを激しく語る。西行は提婆品を誦し続け、気づくと霊は消えている。「彼一日」。修行を重ねて十余年、西行は長谷寺の観音堂で夜通し勤行しようとする。闇の中に同じく祈る僧形の人が現れ、その数珠の音に引かれて言葉を交わすと、相手は出家前に別れた妻であった。妻は、自分を捨てて出家した西行への思いと、幼いころ縁から突き落として別れた娘のことを訴える。西行は、数日前にその娘に出家を勧めて尼にしたことを明かし、世を捨てることの意味を説いて妻を慰める。
登場人物
- 西行 出家して行脚する歌僧。もとの名は憲清。仏道に励むが、断ち切れぬ人の情も抱える
- 崇徳院の霊 保元の乱に敗れて讃岐に没した院の怨霊。白峯の御陵に現れ、世への恨みを語る
- 西行の妻 出家した西行と別れて尼となり、長谷寺で西行と思いがけず再会する
冒頭部(原文より)
観見世間是滅法、欲求無尽涅槃処、怨親已作平等心、世間不行慾等事、随依山林及樹下、或復塚間露地居、捨於一切諸有為、諦観真如乞食活、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。実に往時はおろかなりけり。
「二日物語」幸田露伴(青空文庫)
末尾部(原文より)
世を捨つる人がまことに捨つるかは捨てぬ人こそ捨つるなりけれ、たゞ幾重にも御仏を頼み玉へ、心留むべき世も侍らず、南無仏〻〻〻、と云ひ切りて口を結びて復言はず。月はやがて没るべく西に廻りて、御堂に射し入る其光り水かとばかり冷かに、端然として合掌せる二人の姿を浮ぶが如くに御堂の闇の中に照し出しぬ。
「二日物語」幸田露伴(青空文庫)
原文を読む
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