ねじくり博士(幸田露伴)のあらすじ・登場人物
宇宙の真理はねじねじにあり
- 風刺
- 文字数
- 6,724字
- 読了目安
- 約13分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1890年(明治23年)4月、『読売新聞』に連載された「日ぐらし物語」の一話として発表された幸田露伴の短い小説。古今東西の書を読み尽くして大悟したと評判の大博士「ねじくり先生」のもとへ新聞記者が訪ね、高説を所望する。人の好い先生は鼻をクンクン鳴らしながら、少年時代、通学路の野道がなぜ真っ直ぐについていないのかを不思議に思ったことから、宇宙を貫く大真理を発見したと語り出す。作品のほとんどは博士の一人語りで、犬の尻尾から天体の運行まで、身の回りの事物を次々に一つの理屈へ引き寄せていく。大言壮語の学説と自慢話を記者が神妙に拝聴するという趣向の、諷刺のきいた小品である。
あらすじ
新聞記者の訪問を受けたねじくり先生は、世の凡人は社会を直線ずくめにしたがって困ると前置きし、自分の大真理は道から発見したと語り出す。少年時代、急いで野原を通学したとき、道が真っ直ぐについていないのを不思議に思い、「ねじねじは宇宙の大法なり」と悟ったのだという。犬の尻尾、髪の毛、吹矢の紙片、沈む石、鉄砲の弾、鶴の飛び方、地球や月の運行まで、物は勢力に追いやられると螺線的に進むと説き、それは最も障碍の少ない運動の道だからだと理由づける。さらに世界に死というものはない、蚕は蛾になって生きていると論じ、二つの力が曲線上でぶつかることから天地万物が生まれ、人間の意思も社会の盛衰も易の卦も螺旋だと、話はいよいよ大きくなる。最後に先生が「螺旋法に限るぞ」と胸を張ると、記者はつくづく感心して、なるほど法螺とはこれから始まったのかと言うのだった。
登場人物
- ねじくり先生 古今東西の書を読み尽くしたという評判の大博士
- 新聞記者 先生の高説を聞きに来た新聞社員
冒頭部(原文より)
当世の大博士にねじくり先生というがあり。中々の豪傑、古今東西の書を読みつくして大悟したる大哲学者と皆人恐れ入りて閉口せり。一日某新聞社員と名刺に肩書のある男尋ね来り、室に入りて挨拶するや否、早速、先生の御高説をちと伺いたし、と新聞屋の悪い癖で無暗に「人を食物にする」会話を仕出す。
「ねじくり博士」幸田露伴(青空文庫)
末尾部(原文より)
アア螺旋法なるかななるかな。といいたるまま、かの学者はクンクンと鼻をならしながら、どうだ分ッたか螺旋法が、少し分ったろう、螺旋法に限るぞ、といい玉う。かの男は閉口してつくづく感心し、なるほどなるほど法螺とはこれよりはじまりけるカネ。
「ねじくり博士」幸田露伴(青空文庫)
原文を読む
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