藪の鶯(三宅花圃)のあらすじ・登場人物
鹿鳴館の令嬢たちの恋と学問
- 恋愛
- 風刺
- 文字数
- 31,356字
- 読了目安
- 約1時間3分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
のちに三宅雪嶺の妻となる田辺花圃(三宅花圃)が、1888年(明治21年)に金港堂から刊行した長編小説。近代の日本で女性が書いた最初の小説とされ、その原稿料に刺激されて樋口一葉が小説を書き始めたという話でも知られる。鹿鳴館時代の舞踏会で令嬢たちが言葉を交わす場面から始まり、洋行帰りの青年や、西洋風を追う令嬢、学問に励む娘たちの姿を通して、欧化に浮かれる東京の上流社会を描く。会話を中心に場面を進める書き方に、坪内逍遥『当世書生気質』の影響が見られる。
あらすじ
鹿鳴館風の夜会で、洋服を着た令嬢たちが、ダンスの相手や男性の噂話に興じている。なかでもひときわ目立つのは、西洋の流行を何よりも好む篠原子爵の愛娘・浜子だった。浜子の婿と目されているのは、子爵の遠縁で英国ケンブリッジに学ぶ篠原勤で、五年の洋行を終えて帰国する日が近づいている。一方、今川小路の二階に間借りする山中正という男は、年上の女お貞と手を組み、浜子に近づいて篠原家に取り入ろうとしている。帰国した勤は、西洋かぶれの父と浜子のありさまに失望し、友人の宮崎や斎藤とともに、上辺だけの欧化を批判する。その勤が心を寄せるようになったのは、貧しいなかでも学問に励み、弟の葦男を支えて暮らす慎ましい娘・松島秀子だった。浜子は、父の子爵に取り入る山中の甘言に乗せられて道を誤り、勤との縁は断たれる。やがて子爵家を継いだ勤は秀子を妻に迎え、宮崎の媒で芝の紅葉館に新婚の祝宴が開かれる。宮崎もまた浜子の友だった浪子を妻にしていた。葦男はのちに工学士として名を上げ、学問を志す娘たちは師範学校へ進む。山中とお貞の行く末は定かでないと、物語は結ばれる。
登場人物
- 篠原浜子 篠原子爵の愛娘。西洋の流行を好む
- 篠原勤 子爵の遠縁で、浜子の婿と目される青年。英国に五年留学して帰国する
- 松島秀子 貧しいなかで学問に励む慎ましい娘
- 松島葦男 秀子の弟
- 山中正 浜子に近づき篠原家に取り入ろうとする男
- お貞 山中と組む年上の女
- 宮崎・斎藤 勤の友人たち
冒頭部(原文より)
男「アハハハハ。このツー、レデースは。パアトナアばかりお好きで僕なんぞとおどっては。夜会に来たようなお心持が遊ばさぬというのだから。
「藪の鶯」三宅花圃(青空文庫)
末尾部(原文より)
附けて言う。松島葦男はその後大学に入り。工学を修め。卒業の後。ある一大土木の工を督し。人に名を知らるるに至り。後に宮崎一郎の妹と婚姻を結びしとぞ。斎藤の妹松子と相沢品子とは。その後師範学校に入りて。いずれも才学をもって名を知られたりしが。かねてかたれる志のごとく。女学士にて夫をも持たず。一生を送りしや否や。その将来は知るによしなし。 山中正とお貞の行末はたしかならねど。斎藤が推察に違わぬ結果なるべしと。人々はいえりとぞ。
「藪の鶯」三宅花圃(青空文庫)
原文を読む
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