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此ぬし(尾崎紅葉)のあらすじ・登場人物

無妻主義の秀才と窓の娘

  • 恋愛
  • 風刺

尾崎紅葉 1890年(明治23年)9月 「新作十二番」

文字数
31,255字
読了目安
約1時間3分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

尾崎紅葉が1890年(明治23年)に春陽堂の連作「新作十二番」の一編として発表した中編小説。「女は近づくべからず」と無妻主義をとなえる帝国大学の特待生・小野俊橘と、その隣家の娘・龍子の恋を、軽妙な筆で描く。立身を志して色恋を遠ざける堅物の青年に、窓から毎日のように眺めていた娘のほうが一方的に思いを募らせ、俊橘の幼い弟を手なずけて近づこうとする。思いが通じない娘の手立てはしだいに必死になり、やがて思いがけない事故が二人の距離を一気に縮める。題の「此ぬし」は、恋い慕う相手を指して呼ぶ言葉。本書は博文館『紅葉全集』(1912年。初版は1904年)に収める本文を、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて校正したもので、青空文庫には無い。ルビは底本のものを可能な限り残した。

あらすじ

小石川植物園のそばの小さな借家に、帝国大学二年の特待生・小野俊橘が、十三歳の弟・俊次と老女の三人で暮らしている。信州の貧しい小作の家に生まれ、両親を亡くして苦学を続けてきた俊橘は、出世こそ人生の目的と信じ、「妻は持たない」「女は悪魔だ」と友人たちにも言い切る無妻主義者である。隣の薄井家の二階の窓からは、年ごろの娘・龍子が毎日のように俊橘の出入りを眺めていた。龍子は俊橘の人柄と将来に惹かれており、ある日、庭の芍薬を荒らして捕まった俊次をやさしく迎え、菓子や小物でもてなして手なずける。ところが俊橘は、弟が隣家で歓待を受けたと知って「女に近づくな」と厳しく説教し、行き来を禁じる。龍子は縁日の夜に俊次と出会い、こっそり会う約束をとりつける。そのうち薄井家の飼い犬が狂犬病で暴れて俊次にかみつき、龍子は菓子折りを持ってお詫びに訪れるが、俊橘に玄関で追い返される。その後も毎日お見舞いに通い、手紙を送りつづけた末、龍子は俊次に艶書を預けて兄に渡させる。俊橘は激怒して手紙を破り、俊次を叱りつける。数日後、庭で俊次が吹矢遊びをしていたところ、俊橘が筒を借りて隣の庭の雀を狙って吹いた矢が、窓際にいた龍子の右目を傷つけてしまう。血に染まる龍子は、これで嫁入り先はなくなったと告げ、自分を妻にしてほしいと訴える。俊橘は思わず龍子を抱き起こし、夫婦になると叫ぶ。

登場人物

冒頭部(原文より)

小石川植物園近くは都の田舎にて、閑寂の地なれば屈竟の勉强塲なりと、一軒立の小家に賃居せるは、帝国大学政科二年の特待生小野俊橘とて二十四五歳なるべし。

「此ぬし」尾崎紅葉(青空文庫)

末尾部(原文より)

やれ、やれ!姊様万歳!万歳、万歳!

「此ぬし」尾崎紅葉(青空文庫)

原文を読む

原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:博文館『紅葉全集』第一巻(1912年。初版は1904年)所収の「此ぬし」。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて校正し、本文だけを収録した(柱・扉・挿絵は省いた)。ルビは底本のものを可能な限り残した。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。

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