奇遇(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
編集者と作家の原稿問答
- 風刺
- 恋愛
- 文字数
- 6,239字
- 読了目安
- 約12分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
中国旅行に発つ直前の小説家と編集者の対話から始まる、芥川竜之介の小品。小説家が机の抽斗から出した未発表の原稿「奇遇」を朗読する形で、瞿祐の「渭塘奇遇記」に題材を取った金陵の青年の恋物語が語られる。朗読のあとに原稿の続きが次々に出され、そのたびに二人が言い合う入れ子の構成が特徴。
あらすじ
中国旅行に出発する日、編輯者が小説の原稿を取りに来る。出発まで半時間しかないのに、小説家は何も書けておらず、机の抽斗にあった未発表の小品「奇遇」を読んで聞かせる。元の至順年間、金陵の青年王生は、一年ほど前から遊びをやめ、恋の詩を作っていた。友人の趙生に問われた王生は、松江からの帰りに渭塘の酒家で見かけた娘を毎晩夢に見ており、扇墜と指環を取り交わしたと打ち明け、再び渭塘へ向かう。やがて王生は夢で見た娘とそっくりの少女を連れて帰り、この話は文人の瞿祐が「渭塘奇遇記」にまとめた。編輯者は原稿を受け取ろうとするが、小説家は続きがあると言う。続きでは、王生と少女が舟の上で、夢の話が二人で作った嘘だったと笑い合い、鸚鵡だけがその真相を知っている。さらに少女の父母が、娘夫婦の嘘を承知のうえで見守っていたことも語られる。編輯者はそれを蛇足だと止め、原稿を取り上げて、小説家を五時の急行に間に合うよう急がせる。
登場人物
- 小説家 中国旅行に発つ作家
- 編輯者 原稿を取りに来た編集者
- 王生 金陵の青年
- 趙生 王生の友人
冒頭部(原文より)
編輯者 支那へ旅行するそうですね。南ですか? 北ですか? 小説家 南から北へ周るつもりです。 編輯者 準備はもう出来たのですか? 小説家 大抵出来ました。ただ読む筈だった紀行や地誌なぞが、未だに読み切れないのに弱っています。
「奇遇」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
編輯者 おや、もうよほど急がないと、五時の急行には間に合いませんよ。原稿の事なぞはかまっていずに、早く自動車でも御呼びなさい。 小説家 そうですか。それは大変だ。ではさようなら。何分よろしく。 編輯者 さようなら、御機嫌好う。
「奇遇」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
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