煙草と悪魔(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
煙草を伝えた悪魔と牛商人
- 歴史
- 幻想
- 文字数
- 6,301字
- 読了目安
- 約13分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
煙草は南蛮の宣教師について日本に渡ってきた悪魔が持ちこんだ——そんな伝説をもとに、芥川龍之介が書いた切支丹物の一編。畑の作物の名を当てられなければ魂をもらう、という悪魔と牛商人の賭けが描かれる。
あらすじ
煙草は本来、日本になかった植物である。誰が持ちこんだかと問えば、歴史家はポルトガル人やスペイン人と答えるだろう。だがもう一つ、伝説としての答えがある——煙草は悪魔がどこからか持ってきたのだ、そしてその悪魔は、天主教の伴天連(おそらくフランシス上人)が日本へ連れてきたのだ、と。南蛮の神が渡来すると同時に南蛮の悪魔が渡来する、西洋の善が輸入されると同時に西洋の悪が輸入されるのは、至極当然なことである——芥川はそう書きおこす。伴天連について日本に来た悪魔は、退屈のあまり伊留満(修道士)に化け、教会の畑で見なれぬ植物を育てはじめた。そこへ通りかかったのが牛商人である。この草は何かと尋ねる商人に、悪魔は賭けを持ちかける。三日のうちに名を当てられたら畑の作物を全部やろう、当てられなければお前の体と魂をもらう、と。困り果てた商人は一計を案じ、牛を畑に追いこんで暴れさせた。驚いた悪魔が思わず「煙草を荒すな」と叫んでしまい、商人は名を知って賭けに勝つ。だが芥川は結ぶ——牛商人は救われたが、そのおかげで煙草は日本中に広まった。悪魔の失敗も、一面では成功を伴っているのではないか。「悪魔は、ころんでもただは起きない。誘惑に勝つたと思ふ時にも、人間は存外、負けてゐる事がありはしないだらうか」。
登場人物
- 悪魔 伴天連について日本へ渡り、伊留満に化ける
- 牛商人 悪魔と賭けをする男
- フランシス上人 悪魔を連れてきた宣教師
冒頭部(原文より)
煙草は、本来、日本になかつた植物である。では、何時頃、舶載されたかと云ふと、記録によつて、年代が一致しない。或は、慶長年間と書いてあつたり、或は天文年間と書いてあつたりする。……そこで、この煙草は、誰の手で舶載されたかと云ふと、歴史家なら誰でも、葡萄牙人とか、西班牙人とか答へる。が、それは必ずしも唯一の答ではない。
「煙草と悪魔」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
して見ると牛商人の救抜が、一面堕落を伴つてゐるやうに、悪魔の失敗も、一面成功を伴つてゐはしないだらうか。悪魔は、ころんでも、ただは起きない。誘惑に勝つたと思ふ時にも、人間は存外、負けてゐる事がありはしないだらうか。
「煙草と悪魔」芥川龍之介(青空文庫)
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