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老いたる素戔嗚尊(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

老いた英雄と娘の恋人

  • 幻想
  • 歴史

芥川龍之介 1920年(大正9年) 「大阪毎日新聞」

文字数
11,735字
読了目安
約23分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 島根県

この作品について

『古事記』に見える素戔嗚尊の後日談を、小説として書き直した短編。八俣の大蛇を退治して櫛名田姫を妻にした英雄が、妻を失い、娘とともに海の彼方の島で老いてゆく。そこへ現れた若者を前に、荒々しい気性がよみがえる。神話の筋立てを借りながら、娘の恋人に揺れる父親の心を中心に据えている。『素戔嗚尊』の後にあたる作品。

あらすじ

高志の大蛇を退治した素戔嗚は、櫛名田姫を妻として須賀に宮を営み、多くの子の父となる。姫の死後、長男に世を譲り、娘の須世理姫とともに海の向こうの島へ移って、蜂や蛇を飼いながら静かに暮らす。ある日、須世理姫が旅の若者、葦原醜男を連れて帰ってくる。素戔嗚は二人の睦まじさに苛立ち、若者を蜂の室や大蛇の室に閉じこめ、泳ぎ比べや野の火で殺そうとする。しかし葦原醜男は、須世理姫が渡した領巾や、野鼠の助けで生き延びる。最後に素戔嗚は頭の虱を取らせるが、うとうと眠ってしまい、目を覚ますと髪は垂木に結ばれ、二人は舟で逃げていた。弓を引き絞った素戔嗚は、やがて大笑いし、「おれよりももっと仕合せになれ」と二人を祝福する。

登場人物

冒頭部(原文より)

 高志の大蛇を退治した素戔嗚は、櫛名田姫を娶ると同時に、足名椎が治めてゐた部落の長となる事になつた。  足名椎は彼等夫婦の為に、出雲の須賀へ八広殿を建てた。宮は千木が天雲に隠れる程大きな建築であつた。  彼は新しい妻と共に、静な朝夕を送り始めた。風の声も浪の水沫も、或は夜空の星の光も今は再彼を誘つて、広漠とした太古の天地に、さまよはせる事は出来なくなつた。

「老いたる素戔嗚尊」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

「おれよりももつと仕合せになれ!」  彼の言葉は風と共に、海原の上へ響き渡つた。この時わが素戔嗚は、大日貴と争つた時より、高天原の国を逐はれた時より、高志の大蛇を斬つた時より、ずつと天上の神々に近い、悠々たる威厳に充ち満ちてゐた。

「老いたる素戔嗚尊」芥川龍之介(青空文庫)

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