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春泥(久保田万太郎)のあらすじ・登場人物

変つたなあ、知るめえ、お前なんぞ

  • 心理

久保田万太郎 1928年(昭和3年)1月 「大阪朝日新聞」

文字数
76,653字
読了目安
約2時間33分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1928年(昭和3年)、「大阪朝日新聞」に連載された久保田万太郎の代表作。関東大震災のあとの東京、浅草から向島へ、田端から道灌山へと歩きながら、役者の田代、俳人の小倉、三浦の三人が交わす会話だけで進んでゆく。牛島神社の消えた土手、燃えたという川、震災で死んだ仲間の噂。筋らしい筋はなく、話は人の噂から昔の風景へとゆるやかに移ろってゆくばかりだが、そこに下町の情緒と、失われてゆくものへの作者の深い愛惜がにじむ。

あらすじ

向島の渡しを上がったところで、役者の田代が二人づれの若い女に呼び止められる。あれは誰だと問う小倉に、三浦がずけりと「チビ三郎の内儀さんじゃァねえか」と答えた。役者の女房ならそれらしく挨拶くらいしたらどうだ、と三浦は一人で毒づき、小倉は冬枯れの句を案じながら歩く。桜の若木ばかりの土手を進むうち、田代が急に立ち止まった。牛の御前が——牛島神社が、影もかたちもなくなっている。震災で一面が火の海になり、頼みの水まで燃えて流れ、川へ飛び込んだ者がかえって命を落としたのだと三浦が言う。ここで死んだ吾妻のこと、麻布にいるはずの男がなぜそんな死に方をしたのかという噂。田代自身も、聖天町の油屋の次男坊だったころ、清元の師匠のもらい娘と駆け落ちして身を持ち崩した男である。三人の足は向島から浅草へ、田端から道灌山へと移り、見渡すかぎりの屋根と林立する煙突が「新しい東京」を物語っていた。

登場人物

冒頭部(原文より)

向島 一  ……渡しをあがったところで田代は二人づれの若い女に呼びとめられた。――小倉と三浦とはかまわずさきへ言問のほうへあるいた。 「何だ、あれ?」  すぐにあとから追ッついた田代に小倉はいった。 「あれは、君……」いいかけて田代は「慶ちゃん、君は知ってるだろう?」

「春泥」久保田万太郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

 その光景のうえにひろがった大空。――水のように晴れたその大空に影を曳いた夕焼雲。……小倉はそれをみて無言だった。――淋しさやうかびて遠き春の雲、そうした句をしずかにかれはおもい案じていた。     ――――――――――――――――――――  ……田端から電車に乗って上野で下りた三人はそこでまた浅草まで地下鉄道に乗った。――三人はいつかの向島のかえりのようにまた「菊の家」へとこゝろざしたのである。

「春泥」久保田万太郎(青空文庫)

原文を読む

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