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ピストルの使い方(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

山の古塚で出会う振袖の女

  • 幻想
  • 心理

泉鏡花 1928年(昭和3年)2月

文字数
39,058字
読了目安
約1時間18分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

泉鏡花の中編。末尾に「昭和三(一九二八)年二月」とあり、前題は「楊弓」。晩秋の山上の墓地で、旅の男・郡多津吉は、振袖姿の流しの女芸人と出会う。女は山に伝わる名工と銀の鶏の話を語り、物語は土地の人々が建てた大きな銅像と、ピストルをめぐる騒動へ進む。天狗や魔所の気配、名工の悲話、美術の評価というテーマが重なる。

あらすじ

晩秋、旅の男・郡多津吉が山上の墓地で、松の根もとに白い饅頭を鶏のように並べた古い塚を見つめていると、振袖姿の女が現れる。女は諸国を回る流しの法界屋で、この塚が土地の名工・近常夫婦の墓であることと、銀の鶏の彫金にまつわる近常の悲しい運命を、旅籠で按摩に聞いた話として語る。やがて城下に火事が起こって人々が駆け出すなか、二人は山の上に立つ大きな銅像の前に至る。柴山運八・運五郎の父子が作ったという銅像の前で、二人は鏨とピストルを手に騒動を起こし、血を流して倒れる。そこへ居合わせた美術界の大家・榊原俊明が、銅像の目は潰されたために活きたのだと言い放ち、自動車で二人を病院へ運ばせる。女は彼を「天狗さん」と呼び、きっと治るぞと言われる。

登場人物

冒頭部(原文より)

はじめ、私はこの一篇を、山媛、また山姫、いずれかにしようと思った。あえて奇を好む次第ではない。また強いて怪談がるつもりでもない。  けれども、現代――たとい地方とはいっても立派な町から、大川を一つ隔てた、近山ながら――時は晩秋、いやもう冬である。薄いのも、半ば染めたのも散り済まして、松山の松のみ翠深く、丘は霜のように白い、尾花が銀色を輝かして、処々に朱葉の紅の影を映している。高嶺は遥に雪を被いで、連山の波の寂然と静まった中へ、島田髷に、薄か、白菊か、ひらひらと簪をさした振袖の女が丈立ちよくすらりと顕われた、と言うと、読者は直ちに化生のものと想わるるに相違ない。

「ピストルの使い方」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

柄杓とともに、助手を投出すと斉しく、俊明先生の兀頭は皿のまわるがごとく向かわって、漂泊の男女の上に押被さった。 「別嬪。」 「あれ、天……狗……さん。」 「しかり、天狗が承合うた、きっと治るぞ。」  道中皺の手巾で、二人の頭も顔も涙も一所くたに拭いてやりつつ、 「する事は乱暴じゃが、ああ、優しいな。」  と、ほろりとして言った。

「ピストルの使い方」泉鏡花(青空文庫)

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