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土神ときつね(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

樺の木をめぐる土神と狐

  • 幻想
  • 心理

宮沢賢治 1934年(昭和9年)

文字数
9,411字
読了目安
約19分
表記
新字新仮名
舞台
  • 岩手県

この作品について

美しい樺の木をめぐって、粗野だが正直な土神と、上品だが嘘つきな狐が張り合う——宮沢賢治の童話のなかでも、ひときわ苦い読後感を残す一編。

あらすじ

一本木の野原の北のはずれ、少し小高い所に、幹がてかてか黒く光る美しい女の樺の木があった。この木には二人の友達がある。一人は谷地に住む土神、もう一人は南の方からやってくる茶いろの狐である。樺の木はどちらかといえば狐の方が好きだった。土神は神という名こそついているが、ごく乱暴で、髪もぼろぼろ、眼も赤く、いつもはだしで爪も黒く長い。狐の方は大へん上品な風で、めったに人を怒らせない。狐は樺の木のもとを訪れては、望遠鏡や詩集やイタリアの彫刻の話をして聞かせる。だがそれはみな嘘で、狐は本を一冊も持っていなかった。土神はそれを知りながら、樺の木が狐に心を寄せているのがしゃくにさわってならない。神である自分がなぜ一匹の狐に嫉妬するのかと苦しみ、自らの心をもてあまして荒れ狂う。ある月夜、土神はついに狐を追いつめ、走って逃げる狐を捕らえて、力まかせにねじり殺してしまった。狐は口を尖らせ、少し笑ったようになったまま、土神の手の上でぐんにゃりと首を垂れていた。土神は狐を地べたに投げつけ、四、五へん踏みつけて、狐の穴に飛びこむ。中はがらんとして暗く、ただ赤土が奇麗に堅められているばかりだった。外へ出た土神が、狐の屍骸のレーンコートのかくしに手を入れてみると——そこには茶いろのかもがやの穂が二本、入っていた。土神は口を大きくまげたまま、途方もない声で泣き出した。その泪は雨のように狐に降り、狐はいよいよ首をぐんにゃりとして、うすら笑ったようになって死んでいたのである。

登場人物

冒頭部(原文より)

 一本木の野原の、北のはずれに、少し小高く盛りあがった所がありました。いのころぐさがいっぱいに生え、そのまん中には一本の奇麗な女の樺の木がありました。  それはそんなに大きくはありませんでしたが幹はてかてか黒く光り、枝は美しく伸びて、五月には白い花を雲のようにつけ、秋は黄金や紅やいろいろの葉を降らせました。

「土神ときつね」宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

 それからぐったり横になっている狐の屍骸のレーンコートのかくしの中に手を入れて見ました。そのかくしの中には茶いろなかもがやの穂が二本はいって居ました。土神はさっきからあいていた口をそのまままるで途方もない声で泣き出しました。  その泪は雨のように狐に降り狐はいよいよ首をぐんにゃりとしてうすら笑ったようになって死んで居たのです。

「土神ときつね」宮沢賢治(青空文庫)

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