一本のわら(楠山正雄)のあらすじ・登場人物
一本のわらが呼んだ、福運
- 幻想
- 心理
- 文字数
- 5,589字
- 読了目安
- 約11分
- 表記
- 新字新仮名
- 舞台
- 奈良県
- 京都府
この作品について
観音さまのお告げのままに、寺の門前でつかんだ一本のわらを大事に持って歩き出した貧しい若者。わらはあぶに、みかんに、布に、馬に姿を変えてゆく——「わらしべ長者」として知られる日本の昔話を、楠山正雄が語り直した一篇。
あらすじ
大和国に、身寄りも仕事もない貧しい若者がいた。心細さのあまり長谷寺のお堂にこもり、生きるか死ぬかこの身をどうにかしてくださいと二十一日間祈りつづける。明け方の夢に現れた老人は、ここを出て最初に手にさわったものを、どんなつまらないものでも大事に持っていろ、と告げた。若者が大門をまたいだ拍子につまずいて、思わずつかんだのは一本のわらだった。道々うるさく飛びまわるあぶをそのわらでしばって枝につけて歩くと、通りかかった牛車の子どもがほしがり、代わりにみかん三つをもらう。そのみかんは、暑さに倒れた供の女を助けて上等の布三反になり、布は行き倒れた名馬と引きかえになる。若者が観音さまに祈ると馬は息を吹き返し、その馬は京の近くで稲田三町と米、さらに留守を預かる家にまで化けた——。信心と正直と、そしてわずかな親切が積み重なって福運を呼び寄せる、日本の昔話の代表的な一つ。子どもがそのまま声に出して読める平明な文体で知られる楠山正雄の再話である。
冒頭部(原文より)
むかし、大和国に貧乏な若者がありました。一人ぼっちで、ふた親も妻も子供もない上に、使ってくれる主人もまだありませんでした。若者はだんだん心細くなったものですから、これは観音さまにお願いをする外はないと思って、長谷寺という大きなお寺のお堂におこもりをしました。
「一本のわら」楠山正雄(青空文庫)
末尾部(原文より)
そのうちに、若者はいいお嫁さんをもらって、子供や孫がたくさん出来ました。そしてにぎやかなおもしろい一生をおくるようになりました。 一本のわらが、とうとう、これだけの福運をかき寄せてくれたのです。
「一本のわら」楠山正雄(青空文庫)
名文
おやおや、一本のわらが大きなみかん三つになった。
観音さまのお告げで拾ったわらがあぶに、あぶがみかんに変わったときの若者の喜び。わらしべ長者の物語の最初の一歩だ。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。