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花咲かじじい(楠山正雄)のあらすじ・登場人物

枯れ木に花を咲かせましょう

  • 幻想

楠山正雄 1921年(大正10年)

文字数
3,063字
読了目安
約6分
表記
新字新仮名

この作品について

「ここほれワンワン」と鳴く犬の白、うすからあふれる米、そして枯れ木に花を咲かせる灰——日本の五大昔話の一つを、楠山正雄が声に出して読める文章で再話した一編。正直なおじいさんと、そのまねをして失敗する欲ばりなおじいさんの対比で語られる、勧善懲悪の代表的な昔話である。

あらすじ

むかし、子のない正直なおじいさんとおばあさんが、飼犬の白を我が子のようにかわいがっていた。ある日、白は畑でおじいさんのすそをくわえ、「ここほれ、ワン、ワン」と鳴く。掘ってみると小判がざくざく出てきた。それを見た隣の欲ばりじいさんは白を無理に借りてゆくが、掘り当てたのはがらくたばかり。腹を立てた欲ばりじいさんは白を殺してしまう。悲しんだ正直じいさんは、白の墓に植えた松で臼をこしらえ、米をつくと米がどんどんふえて出てくる。臼を借りた欲ばりじいさんがつくと汚いものが出て、怒って臼を焼いてしまった。正直じいさんがその灰を墓のそばにまくと、風に舞った灰が庭の枯れ木にかかり、たちまち花が咲いた。「花咲かじじい、日本一の花咲かじじい、枯れ木に花を咲かせましょう」——通りかかった殿さまの前で見事に桜を咲かせたおじいさんは、たくさんのごほうびをいただく。それをうらやんだ欲ばりじいさんも同じことをするが、花は咲かず、灰が殿さまや家来の目や鼻に飛び込んで大さわぎとなり、とうとうろう屋へ引かれていったのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがありました。  正直な、人のいいおじいさんとおばあさんどうしでしたけれど、子どもがないので、飼犬の白を、ほんとうの子どものようにかわいがっていました。白も、おじいさんとおばあさんに、それはよくなついていました。  すると、おとなりにも、おじいさんとおばあさんがありました。このほうは、いけない、欲ばりのおじいさんとおばあさんでした。

「花咲かじじい」楠山正雄(青空文庫)

末尾部(原文より)

するうち、どっとひどい風が吹いてきて、灰は遠慮なしに四方八方へ、ばらばら、ばらばらちって、殿さまやご家来の目や鼻のなかへはいりました。そこでもここでも、目をこするやら、くしゃみをするやら、あたまの毛をはらうやら、たいへんなさわぎになりました。殿さまはたいそうお腹立ちになって、 「にせものの花咲かじじいにちがいない。ふとどきなやつだ」 といって、欲ばりおじいさんを、しばらせてしまいました。

「花咲かじじい」楠山正雄(青空文庫)

名文

するとどうでしょう、そこらに枯れ木のまま立っていたうめの木や、さくらの木が、灰をかぶると、みるみるそれが花になって、よそはまだ冬のさなかなのに、おじいさんのお庭ばかりは、すっかり春げしきになってしまいました。

白の形見の灰をまくと、枯れ木が一斉に花ひらく。冬のさなかに庭だけが春になる、話の頂点の情景だ。

花咲かじじい、花咲かじじい、日本一の花咲かじじい、枯れ木に花を咲かせましょう

灰をかかえて町をゆく正直おじいさんの呼び声。題名にもなった、昔話でいちばん知られた決まり文句だ。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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