宗谷〔二〕(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
宗谷海峡の夜明けの甲板
- 文字数
- 358字
- 読了目安
- 約1分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
妹トシの死の翌年にあたる樺太行の途中、宗谷海峡を渡る船上の夜明けを描いた文語詩。北の海の情景を、七五調の簡潔な行に収める。甲板の日の出を待つ紳士が柏手を打つ場面など、旅先の人物観察も見どころ。
あらすじ
かすかな光に染まりつつ明け渡る甲板は、綱具や白い救命ブイ、黄ばんだ排気筒が並ぶ。宗谷岬の影がたたずみ、北には眠るサガレン島の東の尾が黒い葡萄の色に見える。雲が低く垂れ、鉛色の水平線の果てに朱金の一筋がかがやく。髪をきちんと整え、セルの袴の襞を垂らした古風な紳士が、日の出を待っている。船の後ろには黒い砒素鏡のような航跡、漂う材木、水をくぐるかいつぶり。朝日が一度崩れてまた出ると紳士は身を正して柏手を打つ。だが雲に押された太陽は潰え、紳士はけげんに思う。そのうち、その虚像の真下から、燃え湧き融ける本物の日が昇り、舷側もブイも綱具も燃え、波には黄金の柱が立つ。
冒頭部(原文より)
そらの微光にそゝがれて いま明け渡る甲板は 綱具やしろきライフブイ あやしく黄ばむ排気筒 はだれに暗く緑する 宗谷岬のたゝずみと 北はま蒼にうち睡る サガレン島の東尾や
「宗谷〔二〕」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
その虚の像のま下より 古めけるもの燃ゆるもの 湧きたゝすもの融くるもの まことの日こそのぼりけり 舷側は燃えブイも燃え 綱具を燃やし筒をもし 紳士の面を彩りて 波には黄金の柱しぬ
「宗谷〔二〕」宮沢賢治(青空文庫)
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