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すき焼きと鴨料理――洋食雑感――(北大路魯山人)のあらすじ・登場人物

わさび醤油で食った家鴨

北大路魯山人 1954年(昭和29年)

文字数
2,509字
読了目安
約5分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

欧米を旅した北大路魯山人が、ニューヨークのすき焼きとパリの名店ツール・ダルジャンの鴨料理を、遠慮なく斬ってみせた一編。一方的な西欧礼賛への苛立ちと、日本人が日本を知らないことへの嘆きが、辛口の口調で綴られる。最後の一行の身も蓋もなさが、いかにも魯山人らしい。

あらすじ

日本を発つ前から、魯山人はフランスの鴨料理について、やかましく聞かされていた。だが一方的な西欧礼賛が多く、本当のところは分かったものではないと、ひそかに考えていたという。フランスがどうの、アメリカがどうのと親切に話してくれる人たちが、日本のこととなると実はよく知らないのだから、話が初めから狂っているのだ、と。日本人にして日本を知らない連中が向こうへ行くから、外国へ行っても日本のことを教えられない。名物といえば富士に芸者、奈良では鹿に煎餅をやることしか自慢しないのだから、向こうの人間が日本料理を分かるはずがない——魯山人はまずそう嘆く。実例として挙げられるのがニューヨークのすき焼きである。行ってみると、すき焼きでもなんでもない、桶のようにふちの高い鍋で煮る代物だった。そしていよいよパリの名店ツール・ダルジャンでの鴨料理である。仰々しい儀式めいた供し方に付き合いながら、魯山人は持参のわさび醤油を取り出して食べた。供されたブランデーはさすがに上等だったが、同行の士が珍しがって杯を重ねようとするのを「プレゼントだからと言って、いい気になって飲むのは日本人の恥だ」とたしなめる。有名なレストランだからとわけもなく怖れることはない、と。最後にひと言。「ちなみに、先ほどから鴨、鴨と言うが、それは昔の日本人が家鴨を鴨と間違えたのであろう。ツール・ダルジャンの鴨も実は家鴨なのである」。

冒頭部(原文より)

 かねて日本を出発する前から、フランスの鴨料理について、やかましく聞かされていた。  それというのも、一方的な西欧礼賛が多く、ほんとうのところは分ったものではないと、私はひそかに考えていた。フランスがどうの、アメリカがどうのと、親切に話してくれる人たちが、日本のこととなると、実はよく知らないのだから、話が初めから狂っている。

「すき焼きと鴨料理――洋食雑感――」北大路魯山人(青空文庫)

末尾部(原文より)

 ちなみに、先ほどから鴨、鴨と言うが、それは昔の日本人が家鴨を鴨と間違えたのであろう。  ツール・ダルジャンの鴨も実は家鴨なのである。わさび醤油で食った家鴨は、家鴨としては相当に美味かった。

「すき焼きと鴨料理――洋食雑感――」北大路魯山人(青空文庫)

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