札幌(石川啄木)のあらすじ・登場人物
優しい伯母のような町
- 文字数
- 9,603字
- 読了目安
- 約19分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 北海道
この作品について
石川啄木が、1907年(明治40)秋に滞在した札幌の二週間を回想した文章。函館の大火で勤め先の新聞社が焼けたため、友人の紹介で札幌の新聞社へ移った経緯と、石狩平原の中央の都の印象が、懐かしく書かれる。半生を放浪の間に送った啄木が、いつか住みたいとまで思った町の記憶である。
あらすじ
半生を放浪の間に送ってきた私にも、札幌の二週間ほど慌ただしくも懐かしい記憶を残した土地はない、と語り手は始める。道幅が広く、木立の多い洋風の家が離れて並ぶ町は、大きな田舎町のようで、優しい伯母のように心を引く。初めて札幌へ行ったのは明治四十年の秋である。それまで函館にいたが、八月二十五日の晩の大火で、幸い類焼は免れたものの、勤めていた新聞社が丸焼けになった。北海道に渡って四か月、家族を呼び寄せたばかりで途方に暮れていたとき、道庁に勤める友人が見舞いに来て、札幌の新聞社に行くことが決まる。
冒頭部(原文より)
半生を放浪の間に送つて來た私には、折にふれてしみじみ思出される土地の多い中に、札幌の二週間ほど、慌しい樣な懷しい記憶を私の心に殘した土地は無い。あの大きい田舍町めいた、道幅の廣い物靜かな、木立の多い洋風擬ひの家屋の離れ/″\に列んだ――そして甚大きい建物も見涯のつかぬ大空に壓しつけられてゐる樣な石狩平原の中央の都の光景は、やゝもすると私の目に浮んで來て、優しい伯母かなんぞの樣に心を牽引ける。一年なり、二年なり、何時かは行つて住んで見たい樣に思ふ。
「札幌」石川啄木(青空文庫)
末尾部(原文より)
『其處だ。君はまだ若い、僕はも少し深く考へて見たいんだ。』 『奈何考へる?』 『詰りね、單に條件が可いから行くといふだけでなくね。――それは無論第一の問題だが――多少君、我々の理想を少しでも實行するに都合が好い――と言つた樣な點を見付けたいんだ。』(未完)
「札幌」石川啄木(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。