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鳥影(石川啄木)のあらすじ・登場人物

田舎の家と若者の葛藤

  • 家族

石川啄木 1908年(明治41年)11月 「東京毎日新聞」

文字数
85,597字
読了目安
約2時間51分
表記
旧字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 岩手県

この作品について

石川啄木が、故郷の渋民村に近い岩手の田舎を舞台に書いた最初の新聞小説。1908年(明治41)11月から12月にかけて「東京毎日新聞」に60回連載された。帰省する大学生の兄と、縁談のある妹、村の家族や周囲の人々を描き、家の体面や古い因習の中で揺れる若者たちの姿を追う。作者自身が末尾で、事件を十分に発展させられないまま筆を置いたと述べている、未完成の長篇の試作である。

あらすじ

夏草の香る好摩の停車場で、小川家の長女静子が、帰省する兄の信吾を迎える場面から始まる。信吾は大学の英文科に学ぶ、村でただ一人の大学生で、家の誇りでもある。郡でも名の通った資産家の家には、病気がちの母、静子の縁談、跡取りをめぐる思惑があり、東京の自由な空気を知る信吾は、古い家の考えとの間に隔たりを感じてゆく。盛岡の病院にいる智恵子らの存在や、渋民村の暮らしも描かれ、物語は秋風の立つ頃まで進む。作者は末尾に、新聞小説としての最初の試作であり、六十回を重ねても予期のとおり事件を発展させられなかったと記している。

冒頭部(原文より)

其一 一  小川靜子は、兄の信吾が歸省するというふので、二人の妹と下男の松藏を伴れて、好摩の停車場まで迎ひに出た。もと/\鋤一つ入れたことのない荒蕪地の中に建てられた小さい三等驛だから、乘降の客と言つても日に二十人が關の山、それも大抵は近村の百姓や小商人許りなのだが、今日は姉妹の姿が人の目を牽いて、夏草の香に埋もれた驛内も常になく艶めいてゐる。

「鳥影」石川啄木(青空文庫)

末尾部(原文より)

附記。この一篇は作者が新聞小説としての最初の試作なりき。囘を重ぬる六十囘。時歳末に際して豫期の如く事件を發展せしむる能はず、茲に一先づ擱筆するに到れるは作者の多少遺憾とする所なり。他日若し幸ひにして機會あらば、作者は稿を改めて更に智惠子吉野を主人公としたる本篇の續篇を書かむと欲す。

「鳥影」石川啄木(青空文庫)

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