新世帯(徳田秋声)のあらすじ・登場人物
酒屋の若夫婦の小さなすれ違い
- 家族
- 社会
- 文字数
- 41,227字
- 読了目安
- 約1時間22分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
徳田秋声が自然主義的な作風へと転じた最初の作品となった中編小説。1908年(明治41年)10月から12月にかけて「国民新聞」に連載された。酒屋を営む夫婦の日常に忍び込む小さな感情のもつれを、誇張のない即物的な筆致で描く。川端康成が「秋声の自然主義の道はこの作にひらけた」と評したように、秋声文学の原型をなす記念碑的な一作である。
あらすじ
酒屋を営む新吉は、四年前に迎えた妻・お作の、愛想がなく客あしらいの不器用なところに日頃から苛立ちを覚えている。折しも、手形沙汰で捕らわれた知人・小野の妻・お国が困窮して転がり込み、家事や店の手伝いを甲斐甲斐しくこなす。色白で愛嬌のあるお国の働きぶりに、新吉はいつしか心を動かされていく。お作は身重の体で実家に帰るが流産してしまい、力なく戻ってくる。お国のてきぱきとした立ち居振る舞いを目の当たりにしながらも、かえって新吉の胸にはお作への情がわいてくる。何事もなかったように日々は過ぎ、その年の秋の末、お作はふたたび身重になるのだった。
登場人物
- 新吉 酒屋を営む主人。妻お作の不器用さに苛立ちながらも、お国の存在を通じて改めてお作への情を見出す本作の主人公
- お作 新吉の妻。愛想がなく、商売には不向きだが、素朴で情の厚い女性
- お国 新吉の知人・小野の妻。夫の入獄中、新吉の家に身を寄せ、甲斐甲斐しく立ち働く
冒頭部(原文より)
新吉がお作を迎えたのは、新吉が二十五、お作が二十の時、今からちょうど四年前の冬であった。十四の時豪商の立志伝や何かで、少年の過敏な頭脳を刺戟され、東京へ飛び出してから十一年間、新川の酒問屋で、傍目もふらず滅茶苦茶に働いた。表町で小さい家を借りて、酒に醤油、薪に炭、塩などの新店を出した時も、飯喰う隙が惜しいくらい、クルクルと働き詰めでいた。始終襷がけの足袋跣のままで、店頭に腰かけて、モクモクと気忙しそうに飯を掻ッ込んでいた。
「新世帯」徳田秋声(青空文庫)
末尾部(原文より)
新吉は引き寄せて、その頬にキッスしようとした。お作の頬は氷のように冷たかった。 * * * 「開業三周年を祝して……」と新吉の店に菰冠りが積み上げられた、その秋の末、お作はまた身重になった。
「新世帯」徳田秋声(青空文庫)
原文を読む
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