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蒼白い月(徳田秋声)のあらすじ・登場人物

月の浜辺を歩く叔父と甥

  • 心理
  • 家族

徳田秋声 1920年(大正9年)7月 「サンエス」

文字数
9,440字
読了目安
約19分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 兵庫県

この作品について

「サンエス」1920(大正9)年7月号に発表された徳田秋声の短編。大阪で落ち着かない日を送っていた「私」が、大阪と神戸の間の海岸の別荘地に住む兄の養子・桂三郎夫婦を訪ね、月の夜の散歩や須磨・舞子・明石への遠出をともにする数日を描く。京都や奈良の名所に失望し、開けてゆく阪神の郊外にも物足りなさを覚える旅人の目と、兄の家の跡取りをめぐる「私」の複雑な思い、養母に従って家庭に入った若い妻雪江へのいたわりが、淡々とした会話と風景描写の中に重ねられる。大正9年の秋声の好短編の一つに数えられ、事件らしい事件を起こさずに人の境遇をにじませる筆致が特徴である。

あらすじ

京都・奈良の名所にも大阪の町にも失望していた「私」は、大阪と神戸の間の海岸の別荘地に、兄の養子桂三郎と妻の雪江を訪ねる。父を早く亡くし長兄に育てられた「私」は、兄の跡を継ぐかもしれないと思わせられたこともあったが、兄夫婦は義姉の姪の雪江に桂三郎を迎え、二人の男の子も生まれていた。雪江は東京へ出たい望みを抑えて養母の意のままに家庭に入り、どこか虐げられた様子に見える。ある晩、「私」は桂三郎と月の河原や海岸を歩くが、草の中から月を見るのが好きだという彼は単純すぎるようにも思え、雪江のことを尋ねると言葉を濁される。「私」は雪江をよくしてやってほしいと頼み、昔、病後の体で九州の温泉へ渡ったころの寂しい自分を思い出す。後日、「私」は二人を誘って須磨・舞子・明石へ出かけ、雪江は新婚旅行のようだと喜ぶ。舞子の老舗で天麩羅と苺を食べ、明石の人丸山で休み、夜に海岸の家へ戻る。「私」はその晩二人の家を辞し、蒼白い月の下で夫婦と別れ、この白い町を再び訪ねることはないだろうと思う。

登場人物

冒頭部(原文より)

 ある晩私は桂三郎といっしょに、その海岸の山の手の方を少し散歩してみた。  そこは大阪と神戸とのあいだにある美しい海岸の別荘地で、白砂青松といった明るい新開の別荘地であった。

「蒼白い月」徳田秋声(青空文庫)

末尾部(原文より)

 私たちは海の色が夕気づくころに、停車場を捜しあてて汽車に乗った。海岸の家へ帰りついたのは、もう夜であった。  私はその晩、彼らの家を辞した。二人は乗場まで送ってきた。蒼白い月の下で、私は彼ら夫婦に別れた。白いこの海岸の町を、私はおそらくふたたび見舞うこともないであろう。

「蒼白い月」徳田秋声(青空文庫)

原文を読む

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