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新生(島崎藤村)のあらすじ・登場人物

告白によって生き直そうとする男

  • 心理
  • 家族

島崎藤村 1918年(大正7年)5月 「東京朝日新聞」

文字数
335,043字
読了目安
約11時間10分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1918年(大正7年)から翌年にかけて「東京朝日新聞」に連載された長編小説。妻を失った作家・岸本捨吉が、身のまわりを世話する姪の節子と関係を結び、その苦悩から逃れるようにフランスへ渡り、帰国後もなお断ち切れぬ関係に苦しんだ末、すべてを告白して「新生」を得ようとするまでを描く。藤村自身が姪こま子との間に起こした事件をそのまま材料としており、発表当時から芥川龍之介の「老獪な偽善者」という痛烈な批判をはじめ賛否の渦を巻き起こした。日本の告白小説の極点をなす作品である。

あらすじ

妻を亡くし、四人の子を抱えて暮らす作家・岸本捨吉のもとに、兄の娘である節子が手伝いに来る。孤独と疲労のなかで、岸本は姪と越えてはならぬ一線を越え、やがて節子は身ごもってしまう。世間の目を恐れた岸本は、生まれた子を人手に託し、自らは逃げるようにフランスへ旅立つ。異国の下宿でひとり戦火の日々を過ごしながら、岸本は自分の罪を見つめ続ける。三年余の後に帰国してみると、節子の思いは少しも冷めておらず、二人はふたたび危うい関係へ引き戻される。兄からは詰め寄られ、親族の間にも噂は広がっていく。追いつめられた岸本は、ついにいっさいを小説として公けに書き記すことを決意する。その告白は節子を家から追い出す結果を招き、彼女は遠く海を渡って行った。すべてを失った岸本は、庭に残された植木の根を埋め直しながら、なお自分の裡と土の中に節子がいることを感じるのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

序の章 一 「岸本君――僕は僕の近来の生活と思想の断片を君に書いて送ろうと思う。然し実を言えば何も書く材料は無いのである。黙していて済むことである。君と僕との交誼が深ければ深いほど、黙していた方が順当なのであろう。旧い家を去って新しい家に移った僕は懶惰に費す日の多くなったのをよろこぶぐらいなものである。……」  郊外の中野の方に住む友人の手紙が岸本の前に披げてあった。

「新生」島崎藤村(青空文庫)

末尾部(原文より)

「ああそうだ、お節ちゃんが置いて行ったんだね」と泉太も庭へ下りて来て言った。 「やあ。僕も手伝おうや」  こういう子供を相手に、岸本はその根を深く埋め直して、やがてやって来る霜にもいたまないようにした。節子はもう岸本の内部に居るばかりでなく、庭の土の中にもいた。

「新生」島崎藤村(青空文庫)

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