捨児(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
捨て子が語る母の嘘
- 家族
- 心理
- 文字数
- 4,696字
- 読了目安
- 約9分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
- 神奈川県
この作品について
浅草の寺の門前に捨てられた子の身の上を、ある客が「私」に語る短編。捨児を拾った豪放な和尚、五年後に母と名乗って現れた女、そして語り手自身に関わる意外な事実が、順に明かされる。語りの二重構造と、結末の静かな余韻が印象的。
あらすじ
客が「私」に語る。明治二十二年の秋、浅草の信行寺の門前に男の子が捨てられていた。住職の日錚和尚は、これを勇之助と名づけて、わが子のように育てる。五年後、品のよい女が母だと名乗って現れ、夫の米屋が株で破産し、横浜へ落ちる晩に赤子を捨てたこと、その後夫と次男を亡くし、長男を探しに来たことを語る。和尚の説教に感じ入った女は、勇之助を連れて横浜へ帰った。話を終えた客は、その捨児が自分だと明かす。そして、母はほんとうの母ではなかったと続ける。母の隣家の人から、母は田原町にいたころ女の子を産み、三月で亡くしていたと知ったのだ。母が捨児の嘘をついたのは、説教に心を動かされ、知らない母の役を務めたくなったからではないか、と客は考える。彼はそれを母に告げず、以前よりも一層母をなつかしく思うようになったという。
登場人物
- 勇之助(松原勇之助) 信行寺の門前に捨てられた子。のちに綿糸商を営む
- 日錚和尚 信行寺の住職。もとは深川の左官
- 母 勇之助を引き取った女。実の母ではなかった
- 私 客の話を聞く語り手
冒頭部(原文より)
「浅草の永住町に、信行寺と云う寺がありますが、――いえ、大きな寺じゃありません。ただ日朗上人の御木像があるとか云う、相応に由緒のある寺だそうです。その寺の門前に、明治二十二年の秋、男の子が一人捨ててありました。
「捨児」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
「前よりも一層なつかしく思うようになったのです。その秘密を知って以来、母は捨児の私には、母以上の人間になりましたから。」 客はしんみりと返事をした。あたかも彼自身子以上の人間だった事も知らないように。
「捨児」芥川龍之介(青空文庫)
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