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お末の死(有島武郎)のあらすじ・登場人物

死ねと云はれて誰が死ぬものか

  • 家族
  • 社会

有島武郎 1914年(大正3年)1月 「白樺」

文字数
17,123字
読了目安
約34分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 北海道

この作品について

札幌の場末で床屋を営む一家の末娘お末は、半年のうちに四人の身内を送る。自分が与えた胡瓜のせいで弟と姉の赤子が死んだのではないかという負い目を抱えながら、それでも内から溢れる生命力を抑えられない十四の少女に、母と姉は冷たく当たる。有島が札幌の遠友夜学校で教えた少女をモデルにしたといわれ、魯迅が中国語に訳したことでも知られる一篇。

あらすじ

札幌の場末で床屋を営む鶴床の末娘お末は十四になる。その年、長患いの父と二番目の兄を続けて失い、口癖のように「不景気」と言ってまわっていた。天長節の日、大掃除の合間に川へ出たお末は、弟の力三がとってきた熟れない胡瓜を、姉の赤子にも分けて食べる。折しも界隈には赤痢が流行しており、まもなく赤子と力三が相次いで死んだ。孫と子を失った母はヒステリーを起こし、お末を睨んで「覚えて居ろ」と言う。負い目を抱えながらも内から溢れる生命力を抑えられないお末に、母と姉は冷たく当たった。力三の四十九日、友達に誘われて無限軌道の試験を見に行き、夕暮れに帰ると、母は穀つぶしと罵って突き放す。死ねと言われて誰が死ぬものかと胸のうちで反抗しながら姉の家へ逃げたお末は、そこでも家の窮状と自分の不人情をこんこんと責められ、泣き尽くしたあとで静かに死を決意する。翌朝、家の棚にあった昇汞を持ち出し、姉の家で人知れず飲んだ。医者に運ばれ、飲んだのは小さい壜のほうだと答えたお末は、吐瀉と苦悶を繰り返し、「哲は学校なら呼ばなくもいゝよ」という言葉を最後に、その日の午後三時半に息を引き取る。翌日、降りたての雪のなかを、鶴床は五人目の葬式を出した。

登場人物

冒頭部(原文より)

お末はその頃誰から習ひ覚えたともなく、不景気と云ふ言葉を云ひ/\した。 「何しろ不景気だから、兄さんも困つてるんだよ。おまけに四月から九月までにお葬式を四つも出したんだもの」  お末は朋輩にこんな物の云ひ方をした。十四の小娘の云ひ草としては、小ましやくれて居るけれども、仮面に似た平べつたい、而して少し中のしやくれた顔を見ると、側で聞いて居る人は思はずほゝゑませられてしまつた。

「お末の死」有島武郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「おゝよし/\。それでよし。ようした/\。ようしたぞよ。お母さん居るぞ泣くな。おゝよしおゝよし」  と云ひながら母はそこいらを撫で廻して居た。而してかうしたまゝで午後の三時半頃に、お末は十四年の短い命に別れて行つた。  次の日の午後に鶴床は五人目の葬式を出した。降りたての真白な雪の中に小さい棺と、それにふさはしい一群の送り手とが汚いしみを作つた。鶴吉と姉とは店の入口に立つて小さな行列を見送つた。棺の後ろには位牌を持つた跛足の哲が、力三とお末とのはき古した足駄をはいて、ひよこり/\と高くなり低くなりして歩いて行くのがよく見えた。  姉は珠数をもみ/\黙念した。逆縁に遇つた姉と鶴吉との念仏の掌に、雪が後から/\降りかゝつた。

「お末の死」有島武郎(青空文庫)

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