二銭銅貨(黒島伝治)のあらすじ・登場人物
独楽の緒にかけた二銭
- 家族
- 社会
- 文字数
- 3,015字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
黒島伝治が1926年(大正15年)、「文芸戦線」に「銅貨二銭」の題で発表した短編小説。独楽回しが流行る季節、川沿いの小さな部落に暮らす貧しい農家の幼い弟・藤二と兄の健吉、つましい母の日々を描く。新しい独楽の緒をほしがる子どもと、わずかな出費にも気を配らずにいられない母とのやりとりを、方言まじりの会話と飾らない文章で淡々とつづった、三千字ほどの小品である。江戸川乱歩の同名の作品とは別の作品。
あらすじ
独楽が流行っている時分、幼い藤二は兄の健吉が使い古した重い独楽を探し出し、懸命に回そうとするが、まだ手に力がない。部落の子どもたちが新しい独楽に新しい緒を巻いて勝負をするのを見て、藤二も独楽の緒をほしがる。苦しい家計に追われる母は、物置きに古い緒が残っていないか確かめたうえで雑貨店へ行き、一本十銭の緒のなかに一尺ほど短いのが一本あって八銭でよいと言われると、それを選ぶ。釣り銭の二銭銅貨を受け取った母は、なんだか二銭儲けたような気がして嬉しかった。ところが藤二は、自分の緒がほかの子のより短いことに気づき、勝負に負けるのもそのせいだと思い込む。稲刈りの忙しい日、隣の部落に田舎廻りの角力が来て子どもたちは見物に出かけるが、藤二だけは、粉ひき臼を回す牛の番を言いつけられて家に残される。藤二は柱に緒をかけ、延びよとばかりに引っぱり続ける。夕方、帰ってきた母が牛小屋をのぞくと、藤二は独楽の緒を握ったまま、牛に踏まれて倒れていた。緒を柱にかけて引っぱっていたところ、片方の端から手が外れて転び、牛に踏まれたのだった。三年たっても母は、あんな短い緒を買ってやるのではなかった、二銭くらい始末をしても何にもならなかったと涙を流す。
登場人物
- 藤二 貧しい農家の幼い次男。新しい独楽の緒をほしがる
- 健吉 藤二の兄。子どものころ独楽に凝った
- 母 苦しい家計にこまごまと気を配る女性
冒頭部(原文より)
独楽が流行っている時分だった。弟の藤二がどこからか健吉が使い古した古独楽を探し出して来て、左右の掌の間に三寸釘の頭をひしゃいで通した心棒を挾んでまわした。まだ、手に力がないので一生懸命にひねっても、独楽は少しの間立って廻うのみで、すぐみそすってしまう。
「二銭銅貨」黒島伝治(青空文庫)
末尾部(原文より)
それから三年たつ。 母は藤二のことを思い出すたびに、 「あの時、角力を見にやったらよかったんじゃ!」 「あんな短い独楽の緒を買うてやらなんだらよかったのに!――緒を柱にかけて引っぱりよって片一方の端から手がはずれてころんだところを牛に踏まれたんじゃ。あんな緒を買うてやるんじゃなかったのに! 二銭やこし仕末をしたってなんちゃになりゃせん!」といまだに涙を流す。……
「二銭銅貨」黒島伝治(青空文庫)
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